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『ミッションからはじめよう!』著者 フィールドマネージメント 代表取締役 並木 祐太

出版 株式会社ディスカバー・トウエンティワン 2012年3月25日第1刷 2012年4月15日第2刷

はじめに P4
 実際のところ巷にあふれている、いわゆる「問題解決本」に書いてあることは、問題解決のプロセスの一部にすぎません。
 そういう本を買ってはみたけれど、結局、使えない。プレゼンまでは上手にできたけれど、そこでおしまい。実際には、問題は未解決のまま……そういう経験をなさっている方も少なくないはずです。なぜなら、実際のビジネスの場面で大事なことは、分析することでも整理することでもなく、「実行」することだからです。

 問題を分析し、素晴らしい戦略を考えることは、手段と訓練と一定の水準以上の思考力さえあれば、誰にでもできます。けれども、その戦略を採用すると決断するのは、その結果に責任を持てる人だけです。
 そして、それを実行するには、強い意志と、周りの人を巻き込む力、徹底する力が必要です。新しい戦略には、必ず抵抗が起こるからです。
 なんであれ、人は新しいことを恐れます。面倒がります。それまでやってきた慣れた方法に戻りたがります。それが、自分たちの既得権を脅かすものであればなおさら、そもそも変革とはつねに古いやり方・仕組みを捨てることなのですから当然です。

 実行のプロセスでは、すべてが実行し続けるための仕組みとスキルが必要です。
 もちろん、本書の中で述べています。けれども、それだけでは、おそらくうまくいきません。
 何よりも大切なのが、本書のタイトルでもある「ミッション」です。
 実行の過程で思わぬ今案があったとしても、変わらぬモチベーションを持ち続けるさけの「ミッション」。なぜ、それを実行するのかというそもそもの志、使命です。

 では、そのミッションと、ただの願望、根拠のない夢、額縁の中に入った「理念」とはどこが違うのか?
 この本の中では、ミッションのつくり方についても、丁寧に、しつこいくらい繰り返し取り上げていくつもりです。ミッションづくりにも、先人の知恵の詰まった「フレームワーク」があるのです。
 それは、企業全体のミッションづくりから、プロジェクト単位、そして、個人のキャリアプランにも使えるフレームワークです。

 利益なくして組織の存在はありえません。利益の源泉は顧客です。したがって、顧客の存在なくして組織の存在はありえません。「事業の目的は顧客の創造である」とドラッカー教授が述べた理由でもあります。という言葉を深耕し「実行」をテーマに、以前読んだ本を読み直しています。

ドラッカーの本『5つの質問』によれば、経営理念、ミッション、ビジョンは以下のように定義されます(引用)。
・経営理念とは「わが社の社会に対する根本的な考え」を言い表したもの
・ミッション(使命)は「わが社が社会で実現したいこと」を言い表したもの
・ビジョンは「わが社のミッションが実現したときの状態」を言い表したもの
「経営理念は想い、ミッションとは行動、ビジョンとは結果のこと」

 以前紹介した『経営は実行』の本から、「実行のため最も重要なのはリーダーが自分の組織に情熱を持って深くかかわることであり、他社や自社の現実に正直であることだ」という文を紹介しました。ミッションからはじめ、事業領域を見直し(再定義)、そして組織への情熱と適切な現状認識を忘れず「実行」。
コロナで業績が低迷している…という言い訳から脱却するため元マッキンゼー最年少役員が書いた『ミッションからはじめよう!』、お薦めします。

『非営利組織の経営』 著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

発行所ダイヤモンド社 2007年1月26日第1刷発行 2017年8月1日第14冊発行 P121

多様な関係者
 非営利組織といえども、成果をあげるにはプランが必要である。プランはミッションからスタートしなければいかなる成果もあげられない。ミッションが、あげるべき成果を想定する。
 したがって、非営利組織は、顧客は誰かを考え、そのそれぞれにとって成果はなんであるかを考えなければならない。
 非営利組織と企業との最大の違いは、非営利組織には多様な関係者がいるところにある。かつて、企業には関係者は1種類、顧客しかいなかった。当時は、従業員、コミュニティ、環境、株主さえ制約要件にすぎなかった。これが大きく変わったことが、今日のアメリカの経営者が世も末と思うようになった一因である。
 ところが、非営利組織にとって関係者はもともとたくさんいる。そのいずれもが拒否権を持っている。学校の校長は、教師、教育委員会、納税者、そして高校の場合には生徒まで満足させなければならない。これら五種類の顧客がみな、学校を違う角度から見ている。彼らのいずれもが、学校にとって欠くことのできない存在である。それぞれがそれぞれの目的をもっている。校長としては、クビにされたり、ストライキされたり、座り込まれたりすることのないよう、彼らのすべてを満足させなければならない。
 1960年頃まで、地域の病院は基本的に医師のために経営されていた。医師が最上位の関係者だった。医師が「入院させなさい」といえば逆らう者はいなかった。いまでは事態は変わった。医療費を負担する雇用主が、医療的にも経済的にも満足させられるべき関係者として登場した。病院の収入の五分の二が老人医療費となったために、連邦政府が病院の利害関係者として登場した。会員制健康保険組合まで利害関係者になった。病院の職員も発言権を増大させた。より多くを要求するようになったというよりも、彼らの多くが専門性を高めたためだった。
 最近協会の多くが信者を増やし、活動を活発化させているのは、青少年、新婚、成人のそれぞれのマーケットが別のニーズを持っていることを認識し、その認識を活動に反映させるようになったからである。
それらの境界は、信者のグループごとに目標を設定し、それぞれに担当者を配置している。

 上記について『実践するドラッカー利益とは何か』(上田惇生監修P94)では下記のように解説しています。

 多くの組織は、ミッションを持っています。それは企業理念や経営理念などとして表現されています。また、経営計画をはじめとした各種プランも多くの場合持っています。しかし、売上や利益とは別に「成果」を定義している企業は億ありません。ドラッカー教授が「成果が主役である」としたにもかかわらずです。
 経営計画を立案してもいわゆる“絵に描いた餅”となってしまうのは、成果を定義していない点に多くの一端があると考えられます。あるいは、成果の形を利益のみで定義しているケースが多いからではないでしょうか。
(中略)
 ミッションと計画を結ぶ重要な役割を果たす「成果」を明確にすることが、ミッションという良き意図を計画として具体化し、実行たらしめる唯一の方法です。マネジメントの主役たる「成果」に対する組織全体の意識を高めて、結果を手にしましょう。

 そもそもミッションには「使命」や「役割」。「任務」などの意味があり、ビジネスシーンにおいては、「会社が成し遂げたい目標」や「会社が果たすべき使命」。「社会における存在意義」のことを指します。という説明がほとんどです。
 会社が誰に対して果たす使命なのでしょうか?知的資産経営で、「企業が持続的な利益を続けていくためには、その企業の取組みを顧客、取引先、従業員、金融機関、株主などのステークホルダーに有益な情報を開示する必要がある」と述べているのを思いだしました。2冊の本を読み、ミッションとは「会社がステークホルダーに対して果たすべき役割」と理解しました。その「成果」が利益につながらなければ企業は持続的な発展を続けることができない、それがミッションからスタートするという意味ではないでしょうか。

『断絶の時代』 著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

ダイヤモンド社発行 2007年7月12日 第1刷発行 2019年1月24日第5刷発行 P214

(成果が主人公)
 今日の組織は、集中することによってのみ成果を上げうる。組織とそのマネジメントの力の基盤となりうるものは一つしかない。成果である。成果をあげることが、組織にとって唯一の存在理由である。組織が権限を持ち権力を振るうことを許される理由である。このことは、組織それぞれが自らの目的が何であるかを知らなければならないことを意味する。
 われわれは、組織それぞれの能力を測定し、あるいは少なくとも評価することができなければならない。また、組織が自らの役割に集中すべきことを要求しなければならない。これらを超えるものはすべて越権である。
 多元社会iの組織にとっては、それぞれの目的に集中することが正統性の鍵となる。それぞれの組織にとって、何が自らの目的であるかについては、いろいろな考えがありうるし、あって当然である。しかもそれは、状況、ニーズ、価値観、技術の変化によって変わっていく。同じ国の別の大学、同じ産業の別の企業、同じ医療にかかわる別の病院など、同じ世界に属していても、組織が違えば別のものであっても不思議はない。
 しかし、いずれの組織も自らの目的を規定するほど強くなる。自らの成果を評価する尺度と測定の方法を具体化できるほどより大きな成果をあげる。自らの力の基盤を成果による正統性に絞るほど正当な存在となる。こうして、「彼らの実りによって彼らを知る」ことが、これからの多元社会の基本原理になる。

 上記について先週紹介した『実践するドラッカー利益とは何か』P92では下記のように解説しています。

 利益なくして組織の存在はありえません。利益の源泉は顧客です。したがって、顧客の存在なくして組織の存在はありえません。「事業の目的は顧客の創造である」とドラッカー教授が述べた理由でもあります。

 中小企業庁の事業で、早期経営改善計画策定支援事業(通称:ポストコロナ持続的発展計画事業)がスタートしています。認定経営革新等支援機関として、計画の作成を支援する機会が増えてきました。計画は黒字化のストーリーをつくることから始めましょう。


i 多元社会とはつまり、企業だけでなく、政府機関、労働組合、学校、病院など様々な組織が一つの社会に含まれていることを意味します。これは企業の中でも同じことが言えます。企業の中にはさまざまな部署が存在しています。営業部門だけでなく、経理部、総務部、システム開発部などなど。現代は多元社会です。だから、企業全体、社会全体について知る必要があるのです。
参照 https://note.com/parikan/n/n85deecbf944c

『実践するドラッカー 利益とはなにか』上田 惇生 監修 佐藤 等 編集

発行ダイヤモンド社 2013年3月27日第1刷発行 P89

われわれにとっての成果はなにか
 組織の成果は、一人ひとりの人間の生活、人生、環境、健康、期待、能力の変化という組織の外の世界に表れる。組織がミッションを実現するには、あげるべき成果を明らかにして資源を集中しなければならない
『経営者に贈る5つの質問』……P55
P92 成果は組織とマネジメントの基盤である
 組織とそのマネジメントの力の基盤となりうるものは一つしかない。成果である。成果を上げることが、組織にとって唯一の存在理由である。(中略)このことは、組織それぞれが自らの目的が何であり、成果が何であるかを知らなければならないことを意味する。
『断絶の時代』……P214
P94 成果の定義① ミッションからスタートする
 ミッションからスタートしなければいかなる成果もあげられない。ミッションがあげるべき成果を想定する。
『非営利組織の経営』……P121
P96 成果の定義② 三つの領域で定義する
 あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取組み、人材の育成である。これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。
『経営者の条件』……P81
P98 成果の定義③ 効率より成果が先である
 最高の事業であっても効率が悪ければ潰れる。しかし間違った事業であっては、いかに効率が良くとも生き残ることはできない。馬車用の鞭(むち)のメーカーであったのでは、効率のいかんにかかわらず存続はできない。成果のあがる事業であることが繁栄の前提である。効率はその後の条件である。効率とは仕事の仕方であり、成果とは仕事の適切さである。
『マネジメント(上)』……P52

 私の趣味の一つは映画を見ること、気に入った映画は何度も見ます(笑)。ネットフリックス、「もう一度みる」を時々利用します。繰り返してみることで気づかなかったことを発見できます。
 書きたかったのは映画の話ではなく、ドラッカーの本です。以前も書きましたが私は上田惇生氏iの著書を主に読んでいます。繰り返し読むことで理解度が深まります。今、取り組んでいる事はこの本から始めました。PDCAというサイクルを唯一の経営プロセスと考えることは危険です。常にミッションを確認し、必要とあればミッションを見直し、新たな基礎をえて計画を立てていかなければなりません(P246)。もう一度原点に返って復習します。


i1938年11月9日―2019年1月10日は日本の経営学者。モノづくり大学名誉教授、立命館大学客員教授、ドラッカー学会代表。Wikipedia参照

『仕事はカネじゃない!』ケビン&ジャッキー・フライバーグ 著 小幡 輝夫 訳

日経BP社発行 2004年4月26日 第1刷発行 P124

経営戦略を共有する
 経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない。経営者であれば重大な問題に直面したとき、自信をもって対処することを問われる。そんな場合、経営者の立場を自覚する者は常識を働かせて判断を下す。もちろん全社員が経営戦略を熟知していれば、適切な判断を下しやすくなるだろう。経営戦略を従業員に知らせるのは、まさに適切な判断を下してもらうためなのだ。それを確実にする一つの方法として、何か問題に直面したとき、どういう選択肢を選ぶか質問してみるとよい。会社に独自性を持たせるには何をすべきか、考えてもらうのもいいだろう。当然のことだが選択肢を選ぶ場合、会社の目標や現状、存在意義について理解していれば、適切な判断を下しやすくなる。
 サウスウエスト航空は、この問題についてよい見本を提供してくれる。従業員が指定席を設けるよう提案したときコリーン・パレットは、それは会社の基本戦略に沿ったものかと聞き返した。指定席を設けるのは簡単だが、そうした場合、待機時間が長くなり、定時発着の実績に支障をきたさないだろうか。さらに運賃も10ドルから15ドル値上げすることになり、顧客にとっても望ましくないはずだ。ガッツのあるコリーン・パレットは、会社員に自社の経営戦略を再確認させるチャンスを逃がさなかった。彼女はこの問題について従業員と率直に話し合いサウスウエスト航空の経営戦略を説いたのである。経営者の立場で行動するには、経営戦略を熟知していなければならないからだ。
 パレットは従業員の自主性を奨励すると同時に、従業員が適切な判断をしているかどうか点検する必要があることも心得ている。経営戦略に基づく従業員の自主判断の範囲を想定しているの、サウスウエスト航空の目標やビジョン、価値観なのである。自主判断の範囲が規定されているといっても、それは創造性の制限や無秩序とは全く関係ない。サウスウエスト航空の目標は確かに、ウォルマートと違っている。そして、その違いが重要であることをサウスウエスト航空は自覚いているのだ。 i経営者の立場を自覚する従業員は、次のような質問に答えることができる。わが社はどんな事業に取組んでいるか。我が社は何のために存在いているのか。我が社は他社どう違っているのか。経営戦略を示すことは、従業員の活力抑制はつながらない。それによって、従業員は自主的に行動できるようになるのだ。

 この本は、書棚から探しました。「経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない」…奥の深い言葉です。後継者に人事と組織を渡した私にできることはOJT。「お客様の期待に応える取組み」後方支援に徹し、従業員に「仕事を通じて自主的になってもらうこと」に徹します。


iサウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケレハーの法律事務所で役員秘書を勤め、社長兼CEOになった人。

『経営理念の教科書』新 將命 著

㈱日本実業出版社発行 2020年11月1日 P199 第6章 生きた経営理念の使い方


創った理念は使ってこそ
 理解度とは行動の質と量に表れるものだ
 経営理念の理解度とは全社員の行動に表れる。行動に表れるとは、理念を道具として日常業務に使っているということだ。いささか口が酸っぱくなる気がするが、経営理念は使ってナンボである。
 とはいえ改めて経営理念をつくるとなると、それはそれで大変な知力、体力を必要とする。その結晶である経営理念を眺めていると、そこには努力と苦労のにおいがする。
 額縁に入って、社長室の壁の高いところに掲げられた経営理念をみると、社長の気持ちは変わってくる。
 しかし、壁に掲げただけでは何の役にも立たない、単なる掛け声である。
 一つの理念を創り上げるのは、確かに大きな作業だ。だが、創ることそれ自体はプロセスであり、手段にすぎない。
 たとえば、一つの製品を仕上げるには、必ずそれ相応の苦労がある、時間もかかる。
 開発から完成まで一気呵成に一直線という製品はあり得ない。途中に山もあり、谷もある。試行錯誤を繰り返しながら、ときには数多くの挫折も味わい、完成までこぎつけるものだ。だからこそ、完成したときの喜びがひとしおなのである。

●使われない製品は存在しないのと同じ
 しかし、製品はつくって終わりではない。使ってもらわないことには開発した意味がない。
 ソニーが創業から間もない頃に、日本で初めてのテープレコーダーをつくった。まだ社名を東京通信工業としていた時代である。
 日本のオープンリール型のテープレコーダーは、創業者、井深大氏の悲願だった。それまでトースターや電気釜をつくっていた東通工(東京通信工業)がはじめてつくった音響製品である。
 日本初のテープレコーダーは、日本の産業史の中でも画期的な製品だ。
 だが、井深大氏は、テープレコーダーの完成だけでは喜ばなかった。製品は使われなければ意味がない。
 販路を徹底的に追求した。当時の放送局はまだ数が少ない。一般に売るには価格が高い。そこで井深氏は学校に販路を求めた。
 学校なら視聴覚教育用にテープレコーダーを使う。そして学校の数は放送局よりも圧倒的に多い。

●技術も理念も使われるためにある
 かつて、ソニーの役員を務める人から、「ソニーは技術の会社と言われているが実はマーケティングがソニーの強みだったのです」と聞いたことがある。
 その役員は、井深氏のつくった日本で最初のテープレコーダーに感銘を受け、まだ中小企業だった東通工に入社した人だ。
 ソニーはその後も独自の製品を開発し続けてきたが、次第に技術のみ社内での価値が偏り始めたように見える。
 製品も技術も使われてナンボ、つくっただけでは記録に残るだけで記憶には残らない。70数年を経て井深氏のDNAは薄らいだのだろうか。
 技術には二つある。使われる技術と使われない技術だ。
 使われない技術にも優れたものは多い。現在、航空機の材料にも使われる炭素繊維は、源流を辿るとエジソンの発明した電燈に行き着く。
 炭素繊維は、今日でこそ脚光を浴びているが、20年ほど前には釣り竿、ゴルフクラブにしか使われていなかった。
 技術には用途開発が必要なのである。技術がどんなに優れていても、実際に使われなければ冬眠状態が続いてしまう。
 一方、経営理念も同じことで使われるために創られる。
 有言実行(Say if and live it)がなければ、宝の持ち腐れに等しい。
 本来、使うために創られた経営理念が、できたとたんに「記念品」と化しては、何のために創ったのかわからない。「仏作って魂入れず」である。
 カネや時間や技術と同じことで、経営理念もまた使ってこそはじめて本当の意味をもつのだ。

 著者は、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどエクセレントカンパニー6社の社長として活躍、現在コンサルタントをしています。「経営理念を実践する」大事なことですが、なかなかできていません。経営理念を実践するための行動基準をつくり、朝礼で斉唱していますがわが社は「実践できている」と言えるか疑問でした。昨年、幹部合宿で経営理念に基づく基本方針(商品、お客様、社員、会社、地域社会)を話し合いました。そして決まった今年の方針は「お客様の期待に応え、お客様と共に成長しょう!」です。経営理念を実践するための「わが社ならではのやり方」考えませんか。

『自分で考えて動く社員が育つOJT』 中尾 隆一郎 著

フォレスト出版株式会社発行 2020年11月6日初版 P130


「いかだ下り」でキャリアを積んで
「山登り」で専門性を高める

 リクルートワークス研究所の前所長の大久保幸夫さんのキャリア理論で、若手のころは「いかだ下り」敵にキャリアを積み、その後「山登り」敵に専門性を高めるというたとえ話があります。
 いかだ下りは、船に乗って川の急流を下っていくわけです。川の河口がゴールですが、そこに行くことが目的ではありません。
 急流をいかだで下りながら、船頭さんの指示に従い、いかだ上での自分の座る場所を変えたり、岩を棒で突いて方向転換を行います。つまり、チーム―クを学ぶわけです。若い時にこのチームで仕事をする術を学ばないと、その後チームで仕事をする、あるいはチームをけん引する際に、困ってしまうのです。そしてこの「いかだ下り」ができるようになると、次は「山登り」です。「山登り」は「いかだ下り」と異なり、その山に登ることが目的です。山は、それぞれの専門性を表しています。営業、販売、接客、マーケティング、法務、財務、経営、人事、AI、プログラム開発、セキュリティなどです。
 1つの山を選ぶと、その間は他の山に登れません。だから慎重に選ぶ必要があります。低い山であれば単独で登れます。しかし、高い山はチームでないと登れないのです。「速く行きたいのであれば一人で行け、遠くへ行きたいのであれば仲間と行け」ということわざがあります。
 まさにそうですね。
 時間がかかっても良いので、最終的には「人生をかけて実現したいゴール」が書けるようになれば良いと思います。

 著者は29年間リクルートに勤め、管理会計を導入し、いくつかの組織を担当。素晴らしい業績を残して中尾マネジメント研究所を設立しています。本には、「OJTの目的は自律自転する組織を創ること」「自律自転する組織が生まれた背景」とリクルート勤務時の体験が具体的に記載されています。他に『最高の結果を出すKPIマネジメント』『最高の結果を出すKPI実践ノート』があります。
 これまで、「速くいきたいのであれば一人で行け」を優先してきた反省から、人材育成を重要成功要因に掲げ適切なKPIを設定するため、ヒントを探し、書店でこの本と出合い多くの気づきがありました。すでに設定したKPIについて話し合い、従業員みんなで共有することを進めます。

『リーダーが育つ変革プロジェクトの教科書』「DX(デジタル変革)を推進する人材がいない」白川 克 著 kindle版

日経BP社

(P60)
企業に共通する課題、解決策はただ一つ
リーダー育成とビジネス変革の2兎を追え!
「企業の変革を担う人材がいない」。多くの企業に共通する悩みですが、解決策は一つしかありません。ビジネス変革プロジェクトを推進する中で、変革リーダーとなり得る人材を育てることです。
そんな二兎を追う「育つ変革プロジェクト」の第一人者が、具体的な事例とともにノウハウ・方法論を詳細解説しました。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業の経営層やマネジャー、プロジェクト担当者には必読の一冊です。
今、ビジネスのデジタル化、グローバル化が急速に進んでおり、企業やそこで働くビジネスパーソンはこれまでのビジネスのやり方を変えていかなければ、激しい競争に勝ち残っていくことができません。なかでも、デジタルによるビジネス変革を意味するDXは喫緊の課題です。
ところが多くの企業は「変革プロジェクトを担うリーダーがいない」「変革プロジェクトをやったことがないので、リーダーを育てられない」というジレンマを抱えています。それを一気に解決するのが、育つ変革プロジェクトです。
本書では住友生命保険などの事例を基に、育つ変革プロジェクトとは何かを解説したうえで、プロジェクトの立ち上げ方や推進方法、その中で人材を育成するためのノウハウ、プロジェクトの成果を会社全体に広げるやり方などを詳細に解説します。これらは、著者らが10年以上にわたるコンサルティングの実践で培った方法論です。一読すれば「なるほど! これならできる」と腑に落ちて、即座に実践できるはずです。

Kindle版の紹介文をそのまま掲載しました。
経済産業省がデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進しているサイトです。https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/index.html
2020年8月27日付の情報ですが、「「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」を設置します」という記載があります。研究会の趣旨と背景は
https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200827001/20200827001.html
上記にありますが、アフターコロナを前提とした取り組みです。
□企業の変革を担う人材育成
□コロナ禍における企業の事業環境の変化を明らかにし、産業界において戦略
的な展開を進めていくために必要となるDX(経産省記載分引用)

 人材確保が課題の私達中小企業に、このような取り組みができるでしょうか。書店で『いちばんやさしいDXの教本』を買って読みましたが、答えを見つけることができませんでした。
ZOOMを使って実施した、日本経営会計専門家研究学会と共催の「会計データと製品市場分析を組み合わせた経営戦略分析」という研究部会が終わり、次の課題はDX。中小企業に、DXの情報を会計事務所だけで提供することはできません。公的な認定支援機関・中小企業診断士・社会保険労務士等と連携した取り組みが必要な時代になりました。

『実践するドラッカー 事業編 』上田 敦生 監修 佐藤 等 編著

ダイヤモンド社発行 2012年3月8日第1刷発行

(P160)
四つの分析で事業を理解する


 ドラッカー教授は『創造する経営者』で、事業分析のポイントを示しました。「これら四つの分析を総合して使うことによってはじめて、企業のマネジメントは、自社について理解し、方向づけを行うことができるようになる」と言います。
➀→業績をもたらす要因についての分析、利益と資源についての分析
➁→コストセンターとコスト構造についての分析
➂→マーケティング分析
➃→知識分析

 重要なのは、➀➁の診断の後、➂➃の分析で点検することです。たとえば堂々たる主力商品が、実はすでにライフサイクルの末期にあることが判明することもあります。暫定診断の際は、次の点に留意してください。
 第一に、分析の技術の完璧さを求めないことです。残念ながら精緻さを求めれば求めるほど、有用性が低くなる傾向にあります。大切なのは数字そのものでなく、現場で起きていることをイメージできることです。ドラッカー教授は、「複雑で神秘的な手法は無知と傲慢さを隠す煙幕である」と表現しました。
 第二に、意見の対立や判断に関わる問題を明確にすることです。およそ経営に関する重要事項は、事業の集合ではなく、定性的なものや、それゆえ判断が分かれるものが多々あります。
たとえば、製品やサービスの「市場におけるリーダーシップ」や「将来見通し」は、その代表格です。現場担当者は将来見通しを意識しているのに、管理者はまだまだいけると考えているなど、判断に関わる意見の対立は重要な事実を代表しています。
 質問して決めつけないことが重要です。さもなければ間違った問題に対して意思決定を下しかねないからです。教授が言うように、正しい答えを求める姿勢を捨て、正しい問いを用いる努力をこの段階では心がけるべきです。
 質問の対立は、見ている視点の違いでもあります。対立している事実こそが重要な情報であり、そのままトップマネジメントに上げるべきものです。
そしてトップマネジメントは、ありのままの事実をもとに事業の将来を判断します。事実そのものの適否を判断することが重要なのではありません。

 この本は、ドラッカー教授の教えの極意がわかる実践するドラッカーシリーズとして「思考編」「行動編」「チーム編」「事業編」があります。今回は、P160「四つの分析で事業を理解する」をとりあげました。会計専門家として分析し答えをだすまでのことに注力し、それをもとに戦略KPIを考えることが習慣になっていました。この本にある➂マーケティング➃知識分析をすることなく、答えを出していたのです。「正しい答えを求める姿勢を捨て、正しい問いを用いる努力をこの段階では心がけるべきです」という「真」の意味が分かりました。もっと、ドラッカーを勉強します。

『社員の力で最高のチームをつくる』ケン・ブランチャード+ジョン・P・カルロス+アラン・ランドルフ 著 星野リゾート代表 星野 佳路 監訳

ダイヤモンド社

(P20) 4 継続的イノベーション
このごろ、どこに行っても、会社「学習する組織」であり続けなくてはならないという意見を聞く。そのためには、全社員が、昨日より今日、今日より明日の不尾がよくなっている企業というビジョンを共有しなくてはならないと言われる。だが、つねに進歩し自らを乗り越えつづける組織をつくる等ということは容易ではない。まして社員の力でイノベーション――仕事の進め方であれ、製品やサービスであれ――を起こし続けることは至難の業といえる。しかしマイケルには、そうしたイノベーションを起こせない会社は死んだも同然だということもわかっていた。

 そこまで考えてきて、マイケルはますます心配になった。確かにコンサルタントの提案は正しい。会社を生き残らせるには、顧客と品質を優先し、収益性とコスト効率を高め、市場変化に迅速かつ柔軟に対応し、イノベーションを継続しなければならない。だが、どうすればそんなことができるというのか?
 そのためには全社員を目標に向かわせる方法を見つけなくてはならない、と何度も聞かされた。社員には、自分がオーナーであるかのような自覚をもって、あるいは起業家の気概をもって、仕事に取り組んでもらうことが大切だというのだ。社員のなかで眠っている創造的エネルギーを解き放ち、それでいて会社をコントロール不能にしてはならない。社員にはスキルと能力をフルに発揮させ、行動し決定する責任を与え、会社が先の4要件を満たすために働いてもらわなければならない、というのである。

 そう考えたとき、「エンパワーメントi 」という言葉が浮かんだ。マイケルにはこれが必要だとアドバイスしてくれた人もいた。しかし、それならマイケルはさんざん試み、ほとんど成果が上がらないという結果も見ていた。

 この本は、書店で見つけました。本の帯にあった、星野佳路のことば「私にとってもっとも大切な教科書だ」という言葉に惹かれて買いました。最近、“業績に連動する従業員満足度のあげ方”をテーマによんでいるのですが、バランス・スコアカード(BSC)に戦略目標やKPIとして表現するところまで到達できません。先日、来社頂いた大学の先生とBSCの活用事例について話し合ったのですが、「活用がうまくいっているのは、人を大事にする会社」というヒントが見つかりました。本の前書きに、監訳者は「今の星野リゾートは、この本がなければ存在しなかった。私の経営者人生で最も影響を受けたのが本書だ」と書いています。ES(従業員満足)とCS(顧客満足)を考えている方にお勧めします。


iエンパワーメント:自律した社員が自らの力で仕事を進めていける環境をつくろうとする取り組み。社員のなかで眠っている能力を引き出し、最大限に活用することを目指す。(本のP001にある説明を引用)