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『会計事務所の経営支援―経営会計専門家の仕事―』澤邉 紀生・吉永 茂 著

(株)中央経済社 2020年11月1日第1版第1刷発行


はじめに
 今日、我が国の中小企業の多くは、以下の3つの経営課題に直面している。
①円滑な事業承継
②企業の収益向上
③自社に合った経営管理の仕組みづくり
 経営管理の仕組みが構築され、トップの強いリーダーシップの下で全社員が共同体意識をもって日々の業務に励めば、自ずと企業の収益性は向上し、その結果、親族内承継やM&Aも進むことになる。
 しかし、大企業と違って、経営資源に限りのある中小企業がこの取組みを自社だけで完結させるのは容易ではない。経営者の最も身近な専門家である税理士、公認会計士(経営会計専門家)の支援が不可欠である。
 今般の「新型コロナウイルス感染症」の広がりにより、上記3つの経営課題解決の必要性と緊急度は全国的に高まっている。今こそ、すべての経営会計専門家は、「税務」、「監査」といった独占業務の専業から経営支援業務へも軸足を拡張し、地域経済の活性化に貢献すべきである。
 本書は、経営を支援してきた実務家と会計学の研究者による共著である。企業のわかりやすい実例を通じて、自洗的なノウハウだけでなく理論的な考え方の基礎も学んでいただける構成になっている。経営会計専門家だけでなく中小企業のオーナーの方や金融機関の方々等にも読んでいただきたい。
 経営改善に何らかのヒントを与えることができれば、著者としてこれにまさるものはない。

 経営支援を目指す会計事務所待望の書です。実務家会計学の研究者による共著の特徴として、P14に本を読み進めるための基礎知識が解説してあります。顧客企業の経営を理解するための2つのツール(デュポンチャートとROICツリー)と両者の関係性。そしてビジネスモデルを理解するための便利なフレームワークとしてビジネスモデルキャンパスが紹介され、その使い方が解説してあります。
 チャネルと顧客との関係まで俯瞰できる「ビジネスモデルキャンパス」は、私がこれまで学んだことのない知識で、経営上のよくわからない不安を取り除き、ビジネスモデルを見直すためのツールです。この本を読み、会計事務所の所長と職員が対話することにより、経営支援業務の主観的な知識を言語化することができます。会計事務所の教科書です。

会社四季報「業界地図」東洋経済新聞社 2018年9月6日第一刷発行

東洋経済新聞社 2018年9月6日第一刷発行

(P154)
■コンサルティング
 ビジネスコンサルティングと言っても、グローバル企業の戦略を練る外資系大手から中小企業診断士までその内容はさまざまだ。共通しているのは需要の底堅さ。キーワードは「不足」だ。
 中堅、大企業では核となる30代後半から40代前半が就職氷河期世代に重なるため、層が薄い。そこに現在の人手不足が重なり、業務のデジタル化による効率化が不可避だ。調査会社のIDCジャパンによるとデジタル化のための業務手順見直し、デジタル化後のための運用面での需要が拡大している。
 もう一つが中小・零細企業の後継者不足だ。経営破たんによらない廃業は以前から大問題。政府は税制を改正し、2018年4月から事業承継をやりやすくした。中小企業のM&Aを得意とする業者はここを好機と攻勢を強める。
 好循環でも快晴とならないのは皮肉にも人手不足。コンサルは労働集約型なので、即戦力の経験者は取り合いになっている。

 快晴とは「市場が急拡大し、大半の企業が利益を伸ばしている絶好調の状態」。コンサルティング市場は、人手不足のため晴れ(市場は堅調に拡大傾向、上位企業を中心に安定的に成長している)。国内のビジネスコンサル市場予測では、デジタル関連は5年で約4倍と記載されていました。
IBM戦略コンサルティングのHPには、「デジタル+経営戦略」破壊されるか破壊者になるか、デジタル戦略で攻めの経営を!という文言がありました。これからのコンサルティングは、デジタルを使った情報収集と共有それによるビジネスモデル(儲けの仕組み)と連想されます。中小企業数の減少は小規模零細企業の減少、小規模規模零細企業に必要なのは、当該地域の会計事務所。これからの会計事務所に求められているのはコンサルティング機能の強化ではないでしょうか。

「二代目が潰す会社、伸ばす会社」 久保田章市

日本経済新聞社刊 (2013年7月発行)

「二代目が潰す会社、伸ばす会社」 久保田章市(5)企業もアンチエイジングをしないと老いてしまう
 中小企業の経営者において、経営革新が不可欠な第一の理由は、「時代とともに市場(顧客)が変わり、技術が進歩する」からです。
 今、レコードの事例で説明しましたが、ブラウン管テレビ、タイプライター、木製バット、等でも同じ事が言えます。現在進行している携帯電話からスマートフォンへの変化もその一つです。製品だけではなく、公共事業の削減、少子化の進展、メーカーと小売店が直接の取引を行う「中抜き」、インターネット販売の普及などの変化もあります。こうした市場や環境の変化に対応できないと、時代の変化に取り残されてしまいます。
 人間に「老化」があるように、企業にも「老化」があるとすれば、それは「時代の変化に対応できないこと」です。人間の場合、老化を予防し抑制する「アンチエイジング」が注目されていますが、企業の経営革新は「経営革新」だと思います。
 第二の理由は、「中小企業では事業領域が限られる」ことです。
 大企業であれば、多角化は普通です。
 (9行省略)
 このように中小企業においては、そもそも「時代とともに技術が変化する」ことに加え、中小企業ならではの特徴である「事業領域が限られる」ために、経営革新に取り組まなければならないのです。
(P134)

 この本は、商工会の依頼で開催する後継者育成塾で「わかりやすい説明」をしたくてタイトルにひかれて買いました。上記のページは、第4章「先代にできないことをやる」の一部です。
 □2013年と今では、この本で表現している時代の変化はかなりスピード
が増している
 □本では、中小企業の人材、資金、立地などの制約から事業領域は限られる。
もし、柱となる商品や事業が市場の変化や顧客のニーズに合わなくなれば、
事業の継続は難しくなる
 □よって、事業領域を見直すために経営革新に取り組む必要がある。
と述べています。
 後継者が先代から学び取り組むべきことは多くありますが、最も重要で難度が高いのは「事業領域の見直し」ではないでしょうか。
 □今、どのような事業を行って、今後どのような事業を行おうとしているのか
 □わが社はどんな企業で、これからどんな企業になろうとしているのか
経営者の平均年齢は60歳を超えています。これから先のことは考えにくい年代と言えます。それに対して、後継者が30前後とすれば、これから社長になると想定される10年後、社長になってからの20年後・・・社会環境の変化を想定した事業領域を考えることができるはずです。
“経営革新”認定支援機関としての原点はそこにあります。