今日の1ページ

「未来の年表」人口減少日本でこれから起こること 河合 雅司 著

株式会社講談社発行 2018年7月13日第30刷発行

(P156 {AIで解決}は夢物語)
 次に、少子高齢化対策の二つ目、「AI」について考えたい。
 当面の労働力不足を補う方策として期待されているのが、AIで注目されるICTや、ロボットの活用である。
 経済産業省はコンビニ大手5社と協力し、全商品を電子タグで管理することで2025年までに無人レジ化を実現する構想を発表した。こうした技術が普及すれば、労働力不足はかなり解消するだろう。AIの技術開発は目覚ましく、部分的には人を代替して余りある実績を残す技術が登場してきている。それは日本が経済成長を成し遂げるうえで必要であることは間違いなく、私もドラえもんの道具を見てみたいし、SF映画が描くような、AIがあらゆることをなす社会の到来を心待ちにしている1人である。
だが、人間の知能を凌駕し、人々が「仕事に追われる」ことを真剣に懸念しなければならないレベルに達する見通しは立っていない。“夢物語”の域を出ていないのだ。現段階でどこまで労働力不足の解決策として織り込んでよいのかは判断に迷うところである。
 それ以前の問題として、AIの開発者たちが、“人口減少後の社会”をどう描いているがよく見えてこない。AIは大量のデータを学習することで精度を上げていく。「正解」が明確で定期的な仕事にはその能力を発揮するが、その「正解」は人間が定義している。
 我々が求めているのは、現状の業務をAIに置き換えるだけの作業ではなく、人口が大きく減った時代の課題にAIをどう活用するかという展望だ。何をもって「正解」とするかは、開発者が人口減少社会をどう先読みするかで大きく変わってくる。
 開発者たちがAIを使った未来図を描くことなく、単なる精度競争にひきずられたならば、人口減少社会の課題解決に役立たぬものにしかならない可能性だってあるのだ。「AIによってなくなる仕事」といった特集記事もよく目にするが、AIには限界があると認識したほうが適切だ。人口減少の過程でどのような課題が生じるのかをしっかりと整理し、AIと人間の役割分担を考えていくことを優先すべきなのである。

 前回に続いて、「未来の年表」の1ページが参考になりました。経営者に必要なのは、「分析」の基礎技術。分析の目的は、①正しい意思決定をすること、②それによって、組織を良い方向に動かすこと。AIに負けない思考法を身に着けることが必要です。事業の戦略や分析を円滑にするにはビジネスフレームワークの活用=戦略ナビCloudの出番です。

「未来の年表」人口減少日本でこれから起こること 河合 雅司 著

株式会社講談社発行 2018年7月13日第30刷発行

(P89 2030年百貨店の銀行も老人ホームも地方から消える)
(前文略P907行目から)
 国土交通省の「国土のグランドデザイン2050」(2016年)が、三大都市を除いた地域において主なサービスごとに立地に必要な需要規模を、「存在確立50%」と「存在確率80%」という形で計算している。「存在確率50%」とは、その人口規模を下回ると廃業や撤退するところが出てくるラインだ。逆に「存在確率80%」とされる人口規模であれば、ほぼ存在し得る。
 次ページの図をご覧いただきたい。例えば、食料品の小売店や郵便局、一般診療所の存在確立80%は、500人だから、その人数規模の集落であればこうした事業は成り立つ。一方介護老人福祉施設では4500人の人口規模なら存在確立は80%だが、500人では50%。銀行は9500人の人口規模の自治体であれば存在するが、6500人になると撤退を始める。一般病院は2万7500人規模の自治体ならほぼ存在するが、5500人になるとあったりなかったりする。
 このように、「存在確立80%」を見ていくと、訪問介護事業は2万7500人、相当の知識と経験を持つ医師が常時診療し、設備もしっかりした救急告示病院は3万7500人、優良老人ホームは12万5000人、大学や映画館は17万5000人。公認会計士事務所は27万5000人だ。これらを大きく下回ると、立地が苦しくなり始める。
 (以下略)

 この本は、盛岡市にある智創税理士法人盛岡事務所から献本いただきました。献本は、逝去された楢山直樹先生からご子息の代表社員税理士楢山直孝氏に引き継がれ、48回目です。発送状には「決してネガティブにとらえすぎず、チャンスととらえていただけるよう、先見の明をもって経営していただきたいと思います」と書いてありました。ただ、ただ敬服いたしました。
 2030年といえば12年後、私は81歳になっています。住んでいる青森市の推計人口は23万9000人。公認会計士事務所の存在確立は危うくなり、銀行の数も減っているのではないでしょうか。人口減少を「重要な経営課題」ととらえましょう。