今日の1ページ

『小さな会社こそが実行すべき ドラッカー経営戦略』和田 一男 著

明日香出版社発行 2012年11月21日初版発行

(P56)
12 製品分析の基本④製品分類分析
 製品を分類し対策を考えます。ドラッカーは11種類に分けて、それぞれに特徴、とるべき対策、処方があると説明しています。
最初の5つは対応が容易なものです。
➀今日の主力製品
 現在の主力になっている製品、成長の余地は残されているか、資源を過剰配分していないかを注意する。
➁明日の主力製品
明日の主力となる製品。追加資源の見返りが最も大きな製品で、育てる努力が必要
➂生産的特殊製品
 限定された特殊な市場を持つ製品。市場でリーダーシップを持つ製品別利益の大きい製品。
➃開発製品
 見通しのまだわからない、市場に導入中の製品。潜在成長力は期待されるが、後述する独善的な商品にならぬよう、注意が必要。
➄失敗製品
 明らかな問題製品。痛みは大きいが、廃棄や安売り等対応ははっきりしている。

次の6つ
➅昨日の主力商品
 もはやピークを越えてしまった製品。利益には貢献していない。貢献度や愛着はあるが衰退を防ぐことはできない。早い決断が必要。
➆手直し用製品
 製品に手直しによって、大きな成長、市場のリーダーシップ、見返りが大きいと判断される製品。手直しのための欠陥が明確で、内容も大きな利益と成長が現実に見込まれるもの。手直しの機会は一度限りとしないと、問題がさらに深まっていく可能性が高い。
➇仮の特殊製品
 主力商品となりうるのに、特殊製品として扱ってしまっているもの。個別の顧客だけではなく、市場から見た製品の位置づけや次世代の製品の在り方を考える必要がある。
➈非生産的の特殊製品
 市場において無意味な差別化を行っている製品。経済的機能をはたしていないために、売れない。利益流出の原因ともなる。 
➉独善的製品
 明日は成功すると信じられていて、多額の投資をしているが、明日が来ない製品。成功するまでやり直すなどと固執するケースは極めて危険な状態。
⑪シンデレラ製品、睡眠製品
 チャンスを与えればうまくいくかもしれない製品。機会を生かし、資源や支援を十分与えるべき製品だが、者にの力関係で思いきったシフトが行われていない場合がある。

このように、製品の分類、そして処方を考えることも重要ですが、製品の性格の変化を注意深く捉えなければなりません。なぜなら、時間がたてば①今日の主力製品が➅昨日の主力製品になったり、④開発製品が⑩独善的製品になったりするためです。変化を知るためには、2つの原則があります。

➀予期したものと違う結果が出るようになる
 期待と業績を比較することによって、独善的製品という対価していく傾向や、シンデレラ製品という機会の損失を発見することができます。
➁投資の増分に対して、得られる算出量が得られない
 永久に続く製品はありません。すべての製品にはライフサイクルがあり、製品のステージが変化します。

 変化を的確に捉え、どの製品にどれぐらい投資すればいいかを診断することが明日の予測と予防のための手段へと変わります。

 この本は、ドラッカーの『創造する経営者』上田惇生訳のP61「製品とライフサイクル」をわかりやすく解説したもので、脚注に「これらの分析は市場や流通チャネル(販路)にも行うことができます」と書いてありました。私が今、興味をもっているのは、市場と営業利益の貢献度分析です。製品の貢献度分析は出てくるのですが、市場分析に言及した記載を見つけることができません。営業利益の貢献度が高い市場と低い市場があります。この本に書いてあることを参考に利益貢献度の低い市場と高い市場にとるべき戦略を“営業”の視点から分析してみることにしました。

『実践するドラッカー 事業編 』上田 敦生 監修 佐藤 等 編著

ダイヤモンド社発行 2012年3月8日第1刷発行

(P160)
四つの分析で事業を理解する


 ドラッカー教授は『創造する経営者』で、事業分析のポイントを示しました。「これら四つの分析を総合して使うことによってはじめて、企業のマネジメントは、自社について理解し、方向づけを行うことができるようになる」と言います。
➀→業績をもたらす要因についての分析、利益と資源についての分析
➁→コストセンターとコスト構造についての分析
➂→マーケティング分析
➃→知識分析

 重要なのは、➀➁の診断の後、➂➃の分析で点検することです。たとえば堂々たる主力商品が、実はすでにライフサイクルの末期にあることが判明することもあります。暫定診断の際は、次の点に留意してください。
 第一に、分析の技術の完璧さを求めないことです。残念ながら精緻さを求めれば求めるほど、有用性が低くなる傾向にあります。大切なのは数字そのものでなく、現場で起きていることをイメージできることです。ドラッカー教授は、「複雑で神秘的な手法は無知と傲慢さを隠す煙幕である」と表現しました。
 第二に、意見の対立や判断に関わる問題を明確にすることです。およそ経営に関する重要事項は、事業の集合ではなく、定性的なものや、それゆえ判断が分かれるものが多々あります。
たとえば、製品やサービスの「市場におけるリーダーシップ」や「将来見通し」は、その代表格です。現場担当者は将来見通しを意識しているのに、管理者はまだまだいけると考えているなど、判断に関わる意見の対立は重要な事実を代表しています。
 質問して決めつけないことが重要です。さもなければ間違った問題に対して意思決定を下しかねないからです。教授が言うように、正しい答えを求める姿勢を捨て、正しい問いを用いる努力をこの段階では心がけるべきです。
 質問の対立は、見ている視点の違いでもあります。対立している事実こそが重要な情報であり、そのままトップマネジメントに上げるべきものです。
そしてトップマネジメントは、ありのままの事実をもとに事業の将来を判断します。事実そのものの適否を判断することが重要なのではありません。

 この本は、ドラッカー教授の教えの極意がわかる実践するドラッカーシリーズとして「思考編」「行動編」「チーム編」「事業編」があります。今回は、P160「四つの分析で事業を理解する」をとりあげました。会計専門家として分析し答えをだすまでのことに注力し、それをもとに戦略KPIを考えることが習慣になっていました。この本にある➂マーケティング➃知識分析をすることなく、答えを出していたのです。「正しい答えを求める姿勢を捨て、正しい問いを用いる努力をこの段階では心がけるべきです」という「真」の意味が分かりました。もっと、ドラッカーを勉強します。

『人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ 著 仁平 和夫 訳

株式会社阪急コミニュケーションズ発行 1998年6月1日初版 2010年4月6日初版第33刷

(P74 どの顧客がドル箱になっているか)
 次に、顧客を考えてみよう。分析のやり方は同じだが、この場合は、顧客別、顧客グループ別に計算する。高い価格を払ってくれるが、サービスのコストがかさむ顧客もいれば、製品を大量に買ってくれるが、値下げを厳しく要求してくる顧客もいる。プラス要因とマイナス要因が相殺される場合もあるが、そうならない場合のほうが多い。先と同じ計器メーカーについて、分析結果をまとめたのが、図表9である

 どういう基準で顧客を分類したかを、以下に説明する。「タイプA」は、販売額は小さいが、直販であり、高い価格を受け入れてくれるため、粗利益率が極めて高い。サービス・コストはかさむが、高い粗利がこれを埋め合わせている。「タイプB」は流通業者であり、大量発注してくれるので、サービス・コストが安くすみ、その上高い価格を受け入れてくれる。「タイプC」は輸出業者で、高価格で買い取ってくれるのはいいが、サービスに大変なコストがかかる。「タイプD」は大手電子キキメーカーで、絶えず値下げ圧力をかけてくるうえ、アフターサービスに対する要求が激しく、特注品も多い。
 図表10は、先のデータをグラフ化したものである(ここでは、図表を加工しています)。これを見ると、59対15、88対25になっていることがわかる。
「タイプA」は売上に占める割合は15%だが、利益に占める割合は59%と高く、「タイプA」と「タイプB」を合わせると売上に占める比率は25%だが、利益に占める比率は88%に達する。これは、収益性の高い製品を買ってくれていることもあるが、サービス・コストが相対的に低いこともある。

 私が調査した計器メーカーは、この分析結果をもとに、「タイプA(直販)」とタイプB(流通業者)」の顧客を増やすキャンペーンに乗り出した。そのキャンペーンには当然コストがかかったが、それ以上の見返りがあった。「タイプC(輸出業者)」については、製品価格を一部引き上げる、サービス・コストを引き下げる方法を見つけた。電話での連絡や商談を増やしたのである。「タイプD(大手の電子機器メーカー)」については、個別に交渉した(9社がタイプDの売上の97%を占めていた)。技術顧問料を別途に請求した場合もあれば、製品の値上げ交渉に成功した場合もあった。交渉が決裂した3社は、ライバル企業に譲り渡す事にした。経営陣は厄介払いができて、ほっとしている(この3社を顧客にしたライバル企業は、採算が悪化するに違いない)。

 「財務データと製品市場分析を組み合わせた経営戦略分析」をテーマに取り組んでいます。
ドラッカー『創造する経営者』のまえがきに、最初の書名案が「事業戦略」だったと書いてありました。そして、P114で「製品や市場や流通チャネルなど業績をもたらす領域についての分析。利益や資源やリーダーシップについての分析、コストセンターやコストポイントについての分析など、事業そのものについての分析は、企業が「いかなる状況にあるか」を教える。」と事業の分析について述べています。
以前紹介した『人生を変える80対20の法則』を読んでいたら、P74「どの顧客がドル箱になっているか」に具体的な分析の方法が書いてありました。私が読んでいる『経営者の条件』は、「訳者あとがき」によると旧約は1964年、この本の著者リチャード・コッチの生まれが1950年。ドラッカーが「何をなすべきか」について書いている『経営者の条件』とつながりました。「財務データと製品市場分析を組み合わせた経営戦略分析」の基本にします。

『経営者に贈る5つの質問』P.F.ドラッカー 著 訳者 上田 惇生

ダイヤモンド社発行 2009年2月19日第1刷発行

(P37)
質問2「われわれの顧客は誰か?」へのいくつかの追加質問
われわれの顧客はだれとだれか?
・顧客リストを作成したか?非営利組織であるならば活動対象としての顧客のリストに加え、パートナーとしての顧客のリストを作成する。(ボランティア、有給スタッフ、会員、寄付者、委託先)
・われわれはそれぞれの顧客にいかなる価値を提供しているか?
・我々の強みと資源は、それらの顧客のニーズにマッチしているか?もしマッチしているとすれば、それはなぜか?マッチしていないとすればそれはなぜか?
われわれの顧客は変化したか?
・われわれの活動対象としての顧客はどのように変化してきたか?(性別、年齢層、家庭環境、薬物禍、災害)
・それらの変化は、われわれの組織にとって、どのような意味をもつか?
顧客を増やすか減らすか?
・現在の顧客のほかにどのような顧客がありうるか?それはなぜか?
・われわれには彼らの役に立つどのような能力があるか?
・顧客のうち、もはや相手にしないでよい顧客は誰か?それはなぜか――彼らのニーズが変化したからか、われわれの資源に限りがあるからか、他の組織のほうが優れた仕事をしているからか?顧客のニーズとわれわれのミッションあるいは能力がマッチしないからか?

 戦略策定にあたって、製品、市場、流通チャネル(販路)の分析をする必要があります。売上高の順に商品ジャンルを並べて売上管理の仕方を決めるABC分析という手法がありますが、最近、これを市場(顧客)分析に使い、A分類:上位2割の顧客、B分類:次の6割の顧客、C分類:下位2割の顧客に区分して、利益貢献分析をしました。やってみて、売上ではなく、粗利益(売上∸原価)をもとに計算したほうがより実態を把握できることがわかりました。
 ➀市場別粗利益金額-(製造変動費+販売変動費)=市場別限界利益
 ➁市場別限界利益-(製造人件費+販売人件費)-(製造固定費+販売固定費)=市場別営業利益
 市場別限界利益や市場別営業利益を計算する過程で、直接経費と間接経費を配布するとき、工夫が必要ですが、この計算をすることにより、とるべき戦略が見えてきます。ドラッカーの「われわれの顧客は誰か?」の追加質問に答えることが可能になります。