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『社長学マップでわかる!図解 一倉定の実践社長学』 伊藤 彰彦(一倉定研究家)著

株式会社あさ出版発行 2022年4月15日第1刷 

●規律・清潔・整頓・安全・衛生 P107

 環境整備を業務として行う方法はどのようなものなのか。環境整備の定義と手順について触れておきたい。
 一倉は、「環境整備というのは、規律・清潔・整頓・安全・衛生の五つである」とし、特にその意味を明確にしておくべきものとして、規律、清潔、整頓について詳細に言及している。
 規律……「規律とは、①決められたことは必ず守る、②命令や指図は必ず行われるというのが正しい解釈」
 一倉は「規律」について、「社長学」ならではの、社長がもつべき心得を挙げている。たとえば、「『必ず行われる』については、命令や指図を受けた側に一方的な責任があるのではない」として、「命令した側には、行わせる、行えるように指導する。正しく行われたかどうかをチェックする責任がある」と述べている。そのため、「命令の出しっぱなし」や「いくら言っても部下がやらない」と嘆くのは、社長の心得違いであり、社長のほうに非があると断言している。
 清潔……「清潔とは、①いらないものを捨てる、②いる者を捨てないというのが正しい解釈」。
 「清潔」に関しては、「もったいないと捨てずにおくのは美徳のようであって美徳ではないのだ。いらないものに大切なスペースを占領されて仕事に差し支えるのは、愚行でしかない」とし、「もったいない、といっていらない物を捨てずにいるのこそ、本当の意味でもったいないことをしている」と主張している。「もったいないから捨てない」という点については、昔の人はいろいろな考え方もあるだろうが、少なくとも、仕事においては真理であると筆者には肯けるものがある。先述した私の会社における経験を今一度振返ってみたい。
 故障した工具類を「もったいないから、あとで修理してもう一度使おうと、工具箱の隅に置いていても「後で修理」する機会は訪れることなく、いつしか工具箱の隅でホコリをかぶってずっと放置されてしまい、貴重な作業スペースを占拠し、作業の邪魔になることがしばしばだった。
 環境整備の取組みにおける「清潔」を実現させるのは、「もったいないから捨てない」という考え方を捨てることからはじめなければならない。ドラッカーは奇しくも、イノベーションとは「体系的廃棄」でるとした。つまり「捨てること」がイノベーションを生み出すと主張したのだった。
 まさに、環境整備においては、「もったいないから捨てない」という考え方を心の中から捨てることによって、社長は白紙の眼で、環境整備がもたらす生産効率や品質改善、サービス向上などの具体的な効率を客観的に判断することができるようになるのではないだろうか。こうすることによって、一倉が言う「いる者を捨てない」眼力も同時に養われてくるのではないかと思える。
 整頓……「整頓とは、①物の置き場所を決める、②置き場の管理責任者を決めて表示することであって、“片づける”ことではない」。なぜなら、「片づけたら仕事にならないではないか。だから、「片づけろ」という指令は間違いである」から。これは考えてみれば至極もっともで、加えて「物の置き場所を決める時の留意点は仕事に最も便利なような、ということである」としている。
 この点について、“消火器”を事例に出して、「イザという時を考えて、取り出す時にジャマになるようなものは置かないようにしなければならない。これが案外できていないのを、私は知っている」と、だれもが思わずギクリとしてしまうような“真実”をさらりと指摘している。

 第2章 ステップ1「三種の神器」を揃える、三種の神器とは①お客様訪問、②経営計画書、③環境整備。P98に「一倉定は、「環境整備を仕事に原点と位置づけ、お客様訪問と経営計画書に並んで、社長が率先して取り組むべき大切な仕事であるとした」という記載があります。「業績のいい会社」は環境整備ができています。この本を読み、環境整備をすることにより「業績のいい会社」になれるという意味が分かりました。前書きに、ドラッカーのマネジメントは米国の大企業を背景にして生まれたが、一倉定の「社長学」は日本の中小企業における経営指導をとおしてつくられた、と書いてあります。経営者におすすめの本です。

『数値化の鬼』安藤 広大 著

ダイヤモンド社発行 2022年3月1日第1刷発行 2022年4月15日第3冊発行

変えられるもの」と「変えられないもの」を見分ける
「仕事のどこを変えればいいのか」P163

 これを考えるのが、いわば仕事の醍醐味です。
 思いつくままにテコ入れするのではなく、1つにフォーカスし、問題を時解決する。それは個人でも組織でも同じです。そのためには、目のまえでおこっていることの裏側にある「数字」を見つけなければなりません。結果を裏付ける数字があるはずです。

|どこに「X」が隠れているのか

 この見極めに必要なのが。「変数」と言う考えです。
 数学が得意だった人は。「y=ax+b」という一次方程式を思い浮かべてもらうと、「x」が変数であり、それより「y」の値が変わるということがイメージできるでしょう。
 「a」と「b」は定数であり、与えられた数字なので、ここでは変えられません。数字が苦手でも、この本質は理解しておかないといけないので、さらに例を挙げましょう。

たとえば、大事なプレゼンに臨むとします。
資料作成の時間を1時間から1時間に増やし、レイアウトにこだわりぬいたとします。しかし、プレゼンの結果があまり変わらなかったらどうでしょう。ここで2時間の努力を3時間や4時間に増やし、さらに資料作成に時間をかけるのは、間違った努力の仕方です。それは「プレゼン資料の「完成度」が「変数」ではない」からです。
今度は、プレゼンの様子を動画で撮影し、自分で見返してみるとします。すると資料をめくったときにすぐに要点を伝えることなく、ダラダラと前置きの話をしていることに気づきました。そこで、「次の資料に移ったら、最初の10秒で結論を述べる」という方法を試したとします。
すると、プレゼンを聞いている人の反応が変わり、プレゼンの成功する「回数」が以前より増えました。数値化された成果が出たのです。こうして「プレゼンでの「伝え方」が「変数」たったことに気づくことができます。

|「変数」こそが仕事の成果につながる

 このように結果を出すためには、
 「変数が何か」
 「どこに隠れているのか」
 ということを、試行錯誤して見つけ出さないといけません。 
 ここが仕事の成果に直結します。

 まずはプレーヤーとして、自分の仕事の変数を見つけられること、次にマネージャーや経営者として、マイナスにつながる変数を減らすこと。いくら努力しても変えられない部分、つあり「定数」は、さっさと諦めることです。「定数の重要性について、それぞれの方法を見ていきましょう。

 著者は、株式会社識学の代表取締役社長、創業からわずか3年11か月でマザーズ上場を果たしています。P80に識学流PDCAの考え方が説明してあり、PDCAのPは計画、これに時間をかけるのはムダと明言しています。計画は、実際に行動が伴ってはじめて意味を持つ。行動を「なんとなくを許さない」ところまで「数値化」すること、行動量を増やすPDCAの「D」を増やすことが重要。行動を判断する基準になるのがKPIです(「KPI(key performance indicator):目標を達成すための数値化された指標」という概念があります)。
 これまで、KPIをテーマに本を読み実践してきましたが「答」が出るところまで到達できません。この本を読み、KPIを決定する要素には「変数」がある。結果を出すために「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」それが「変数」と理解でき、これまで超えることができなかった「壁」に挑む機会をもらいました。わかりやすいのでお薦めします。

『ミッションからはじめよう!』著者 フィールドマネージメント 代表取締役 並木 祐太

出版 株式会社ディスカバー・トウエンティワン 2012年3月25日第1刷 2012年4月15日第2刷

はじめに P4
 実際のところ巷にあふれている、いわゆる「問題解決本」に書いてあることは、問題解決のプロセスの一部にすぎません。
 そういう本を買ってはみたけれど、結局、使えない。プレゼンまでは上手にできたけれど、そこでおしまい。実際には、問題は未解決のまま……そういう経験をなさっている方も少なくないはずです。なぜなら、実際のビジネスの場面で大事なことは、分析することでも整理することでもなく、「実行」することだからです。

 問題を分析し、素晴らしい戦略を考えることは、手段と訓練と一定の水準以上の思考力さえあれば、誰にでもできます。けれども、その戦略を採用すると決断するのは、その結果に責任を持てる人だけです。
 そして、それを実行するには、強い意志と、周りの人を巻き込む力、徹底する力が必要です。新しい戦略には、必ず抵抗が起こるからです。
 なんであれ、人は新しいことを恐れます。面倒がります。それまでやってきた慣れた方法に戻りたがります。それが、自分たちの既得権を脅かすものであればなおさら、そもそも変革とはつねに古いやり方・仕組みを捨てることなのですから当然です。

 実行のプロセスでは、すべてが実行し続けるための仕組みとスキルが必要です。
 もちろん、本書の中で述べています。けれども、それだけでは、おそらくうまくいきません。
 何よりも大切なのが、本書のタイトルでもある「ミッション」です。
 実行の過程で思わぬ今案があったとしても、変わらぬモチベーションを持ち続けるさけの「ミッション」。なぜ、それを実行するのかというそもそもの志、使命です。

 では、そのミッションと、ただの願望、根拠のない夢、額縁の中に入った「理念」とはどこが違うのか?
 この本の中では、ミッションのつくり方についても、丁寧に、しつこいくらい繰り返し取り上げていくつもりです。ミッションづくりにも、先人の知恵の詰まった「フレームワーク」があるのです。
 それは、企業全体のミッションづくりから、プロジェクト単位、そして、個人のキャリアプランにも使えるフレームワークです。

 利益なくして組織の存在はありえません。利益の源泉は顧客です。したがって、顧客の存在なくして組織の存在はありえません。「事業の目的は顧客の創造である」とドラッカー教授が述べた理由でもあります。という言葉を深耕し「実行」をテーマに、以前読んだ本を読み直しています。

ドラッカーの本『5つの質問』によれば、経営理念、ミッション、ビジョンは以下のように定義されます(引用)。
・経営理念とは「わが社の社会に対する根本的な考え」を言い表したもの
・ミッション(使命)は「わが社が社会で実現したいこと」を言い表したもの
・ビジョンは「わが社のミッションが実現したときの状態」を言い表したもの
「経営理念は想い、ミッションとは行動、ビジョンとは結果のこと」

 以前紹介した『経営は実行』の本から、「実行のため最も重要なのはリーダーが自分の組織に情熱を持って深くかかわることであり、他社や自社の現実に正直であることだ」という文を紹介しました。ミッションからはじめ、事業領域を見直し(再定義)、そして組織への情熱と適切な現状認識を忘れず「実行」。
コロナで業績が低迷している…という言い訳から脱却するため元マッキンゼー最年少役員が書いた『ミッションからはじめよう!』、お薦めします。

『経営は実行』著者 ラリー・ポジティ、ラム・チャラン、チャールズ・パーク 訳者 高遠 裕子

発行所 日本経済新聞社 203年2月12日1版1刷 2007年6月4日刷 P103

第3章どのような貢献ができるか
実行を可能にする文化
 最近よく耳にする言葉がある。それは、考え方で行動は変わらない、行動が変われば考え方が変わるというものだ。
 行動によって考え方を変えるにはまず、「文化」という言葉を読み解くところからはじめなければならない。企業文化とは、突き詰めれば、会社が共有する価値観や考え方、行動規範が集まったものだ。文化の変革を目指す人たちは真っ先に、価値観を変えるべきだと主張する。だが、それは間違いだ。価値観とは高潔さや顧客の尊重、GEの場合ではバウンダリレスネス(境界のないこと)と言った基本原則や基準であり、強化する必要はあっても、変えなければならない場合はほとんどない。会社の中でも特に高い地位にある幹部が、その会社の基本的な価値観に違反したとき、リーダーは断固とした姿勢をとり、誰にでもわかる形で罰しなければならない。それができなければ、精神的な強さが欠けているとみられる。
 多くの場合、変えなければならないのは、具体的な行動に影響を与える考え方だ。考え方は研修や経験、社内外での評判、リーダーの言動に対する見方によって形づくられる。人間が考え方を変えるのは、それが間違いだったと納得できる証拠が提示されるときだけだ。たとえば自分たちの業界が成熟していて成長の見込みがないと考えれば、社員は時間や労力を割いて成長の機会を見つけようとはしない。自分ほど働いていない者がおなじ報酬をもらっていると考えれば、やる気をなくす。
 EDSiでディック・ブラウンが最優先したことのひとつは、考え方と行動に的を絞って文化を変えることだった。2000年1月の上級幹部会議では、過去5年間に自社についての見方を決めた最も重要な考え方と、今後、必要な考え方を上げるよう指示した。グループに分かれて議論した結果、次のようなリストができあがった。

EDSの古い考え方

・当社の事業はありふれている DESが身をおいているのは、成長率が低く、成熟した産業―コンピューター・サービスのアウトソーシングである。この業界は競争が激しく、差異化できず、したがって利益率が低くなるのも当然だ
・当社は市場平均並みの成長はできない EDSはありふれた業界の最大手であり、利益を出しながら成長するのはむずかしい。
・利益は売上についてくる 受注を増やせば、その事業の最大手であり、利益あげられる。こうした考え方では、資源の配分を誤ることになる。
・各リーダーが部門内の資源をすべて所有するー管理がカギとなる 各部門は完全な自主権を持ち、自分の縄張りを守る(こうした考えでは、事業部門間の協力が不可能になる)。
・同僚は競争相手だ 資源の所有者と同じく、この考え方が大きな障害になっている。社内で競争的な行動をとるのは建設的でない。競争相手は隣の部門ではなく、市場にいるのだ。市場で勝利するにはチームワーク、知識の共有、そして協力が欠かせない。
・社員は責任をとらない 「私の責任ではない」が決まり文句になっている。
・顧客よりもわれわれの方が知っている。
・顧客にどのようなソリューションが必要かは、当社の社員が教える
こうした考え方が、顧客の問題やニーズに十分に耳を傾けるのを防げる。

EDSの新しい考え方

・市場を上回る成長は可能あり、しかも収益性が高く、資本効率が高い形で達成できる。
・生産性を毎年向上させることができる
・顧客の成功を手助けする。
・卓越したサービスを実現する。
・われわれの成功にとって、協力がカギである。
・われわれは責任を負い、熱意をもって取組む。
・顧客の声にもっと耳を傾ける。

 二番目のリストが、上級幹部だけでなく、すべてのリーダーの行動を変える指針になった。行動とは考え方を実行したものだ。行動が結果を生む。真価を問われるのが行動だ。行動について問題になるのは、個々の行動よりも行動規範だ。行動規範とは、企業という場で受け入れられ、期待されている行動であり。「関わり合いのルール」とも呼ばれる。行動規範は、社員が集団としていかに動くかを示すものだ。だからこそ、企業が競争優位を築く上で重要になる

 この本は2008年頃、東京の書店で買いました。全米ベストセラーのビジネス書。誰も気づかなかった、「実行」のノウハウをはじめて解き明かした「生きた経営の教科書」ついに登場!と帯書きに惹かれました。「考え方で行動は変わらない、行動が変われば考え方が変わる」という言葉は今でも大事にしています。「実行のため最も重要なのはリーダーが自分の組織に情熱を持って深くかかわることであり、他社や自社の現実に正直であることだ。」(P11)原点回帰、実行の壁に再度挑戦します。


iエレクトロニックデータシステムズ、アメリカ合衆国に本社を置くITサービス企業。2008年にヒューレットパッカードに買収され、独立した企業としては消滅(Wikipedia)。

『経営者の条件』著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

発行所ダイヤモンド社 2006年11月9日 第1刷発行 2013年3月13日第2冊発行 P77

第3章どのような貢献ができるか
貢献へのコミットメント P81
 「どのような貢献ができているか」を自問しなければ、目標を低く設定するばかりでなく、間違った目標を設定する。何よりも自ら行うべき貢献を狭く設定する。
 なすべき貢献には、いくつかの種類がある。あらゆる組織が三つの種類における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取組み、人材の育成である。これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。したがって、この三つの領域における貢献をあらゆる仕事に組み込んでおかなければならない。もちろんそれぞれの重要度は組織によって、さらには一人ひとりの人によって大きく異なる。
 第一の領域である直接の成果については、はっきり誰にでもわかる。企業においては売上や利益など経営上の業績である。病院においては患者の治癒率である。もちろん直接的な成果と言っても、銀行の証券代行部のように誰にも明白なものばかりとは限らない。だが直接的な成果が何であるべきかが混乱している状態では成果は期待しえない。

(略…例として、直接的な成果が三つあり、板挟みになっているイギリスの国営航空会社の事例)

 直接的な成果は常に重要である。組織を活かす上でカロリーの役割を果たす。一方組織には価値への取組みが必要である。これは、ビタミンやミネラルの役割にあたる。組織は方向性をもたなければならない。さもなければ混乱、麻痺し、破壊される。
 第二の領域にある価値への取組みは、技術面でリーダーシップを獲得することである場合もあるし、シアーズ・ローバックのようにアメリカの一般家庭のために最も安く最も品質の良い財やサービスを見つけだす場合もある。もちろん価値への取組みもまた、直接的な成果と同じように明白なものばかりとは限らない。

(略…例として、根本的に相いれない二つの価値観に身を裂かれてきたアメリカ農務省の事例)

 第三の領域が人材の育成である。組織は個としての生身の人間の限界を乗り越える手段である。したがって、自ら存続させえない組織は失敗である。今日、明日のマネジメントにあたるべき人間を準備しなければならない。人的資源を更新していかなければならない。確実に高度化していかなければならない。
 そして次の世代は、現在の世代が刻苦と献身によって達成したものを当然のこととし、さらにその次の世代にとって当然となるべき新しい記録をつくっていかなければならない。
 ビジョンや能力や業績において、今日の水準を維持しているだけの組織は適応能力を失ったと言うべきである。人間社会において唯一確実なものは変化である。自らを変革できない組織は明日の変化に生き残ることはできない。
 貢献に焦点を合わせるということは人材を育成するということである。人は課された要求水準に適応する。貢献に照準を合わせる者はともに働くすべての人間の水準を高める。

(略……例として病院の看護師の「それは患者さんにとって一番良いことでしょうか」というビジョンが病院全体に浸透した例)

 貢献に焦点を合わせるということは、責任をもって成果をあげるということである。貢献に焦点を合わせることなくしては、やがて自らをごまかし、組織を壊し、ともに働く人たちを欺くことになる。

 上記について『実践するドラッカー利益とは何か』(上田惇生 監修P96)では下記のように解説しています。

 組織には、三つの領域の成果が必要です。「直接の成果」は、売上や利益、顧客数など一般に私たちが成果と呼んでいるものです。これらは短期的にも測定可能です。とりわけ本書の重要テーマである利益は、企業の標準的な評価尺度として不可欠の存在です。
「価値への取組み」と「人材育成」は長期的に取組み、継続的に評価していくものです。価値への取組みは、顧客価値の継続的な想像を意味しています。顧客が支持してくれる要因を突き止め、継続的にその価値を高めていくことです。組織における最も重要な成果です。

 「マネジメント・スコアカード」体系化の試み(淑徳大学 藤島秀紀氏i)という論文をネットで見つけました。ドラッカーがコンサルティングに考案したと言われる理論を体系化し、紹介しています。論文には「ドラッカーのマネジメント理論が、R.S.カプランとD.P.ノートンが開発したと言われるBSCに影響を与えていることが容易に想像されよう。事実、BSCの体系にはとくに『現代の経営』の中核概念が随所に取り入れられているのである」という記載があります。
 上田惇生氏訳の『現代の経営』に、CSR、バランスト・スコアカード、職務主義と役割主義の差異などの考え方もすでに記載されているという文面があったのを思い出しました。現代の経営が発刊されたのは1950年代。BSCが発表されたのは1992年です。
 中小企業が外部環境の変化に対応するためには、現状を分析、評価し業績をもたらす領域に経営資源を集中する取組みが必要。これまで取り組んできたBSCとドラッカーの教えをつなぎたいと考え『経営者に贈る5つの質問』4の「我々にとっての成果は何か」(P55)をテーマに読んでいます。今回は、ミッションとビジョンの関係、ドラッカーの「マネジメント・スコアカード」がBSC開発のもとになっていることを知りました。


iドラッカー学会理事、立命館アジア太平洋大学初代学長,立命館大学経済学部教授.京都 大学大学院修了(経済学博士).著書に『大学のイノベーション』(東信堂),『ドラッカー再発見』法律文化社,等

『非営利組織の経営』 著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

発行所ダイヤモンド社 2007年1月26日第1刷発行 2017年8月1日第14冊発行 P121

多様な関係者
 非営利組織といえども、成果をあげるにはプランが必要である。プランはミッションからスタートしなければいかなる成果もあげられない。ミッションが、あげるべき成果を想定する。
 したがって、非営利組織は、顧客は誰かを考え、そのそれぞれにとって成果はなんであるかを考えなければならない。
 非営利組織と企業との最大の違いは、非営利組織には多様な関係者がいるところにある。かつて、企業には関係者は1種類、顧客しかいなかった。当時は、従業員、コミュニティ、環境、株主さえ制約要件にすぎなかった。これが大きく変わったことが、今日のアメリカの経営者が世も末と思うようになった一因である。
 ところが、非営利組織にとって関係者はもともとたくさんいる。そのいずれもが拒否権を持っている。学校の校長は、教師、教育委員会、納税者、そして高校の場合には生徒まで満足させなければならない。これら五種類の顧客がみな、学校を違う角度から見ている。彼らのいずれもが、学校にとって欠くことのできない存在である。それぞれがそれぞれの目的をもっている。校長としては、クビにされたり、ストライキされたり、座り込まれたりすることのないよう、彼らのすべてを満足させなければならない。
 1960年頃まで、地域の病院は基本的に医師のために経営されていた。医師が最上位の関係者だった。医師が「入院させなさい」といえば逆らう者はいなかった。いまでは事態は変わった。医療費を負担する雇用主が、医療的にも経済的にも満足させられるべき関係者として登場した。病院の収入の五分の二が老人医療費となったために、連邦政府が病院の利害関係者として登場した。会員制健康保険組合まで利害関係者になった。病院の職員も発言権を増大させた。より多くを要求するようになったというよりも、彼らの多くが専門性を高めたためだった。
 最近協会の多くが信者を増やし、活動を活発化させているのは、青少年、新婚、成人のそれぞれのマーケットが別のニーズを持っていることを認識し、その認識を活動に反映させるようになったからである。
それらの境界は、信者のグループごとに目標を設定し、それぞれに担当者を配置している。

 上記について『実践するドラッカー利益とは何か』(上田惇生監修P94)では下記のように解説しています。

 多くの組織は、ミッションを持っています。それは企業理念や経営理念などとして表現されています。また、経営計画をはじめとした各種プランも多くの場合持っています。しかし、売上や利益とは別に「成果」を定義している企業は億ありません。ドラッカー教授が「成果が主役である」としたにもかかわらずです。
 経営計画を立案してもいわゆる“絵に描いた餅”となってしまうのは、成果を定義していない点に多くの一端があると考えられます。あるいは、成果の形を利益のみで定義しているケースが多いからではないでしょうか。
(中略)
 ミッションと計画を結ぶ重要な役割を果たす「成果」を明確にすることが、ミッションという良き意図を計画として具体化し、実行たらしめる唯一の方法です。マネジメントの主役たる「成果」に対する組織全体の意識を高めて、結果を手にしましょう。

 そもそもミッションには「使命」や「役割」。「任務」などの意味があり、ビジネスシーンにおいては、「会社が成し遂げたい目標」や「会社が果たすべき使命」。「社会における存在意義」のことを指します。という説明がほとんどです。
 会社が誰に対して果たす使命なのでしょうか?知的資産経営で、「企業が持続的な利益を続けていくためには、その企業の取組みを顧客、取引先、従業員、金融機関、株主などのステークホルダーに有益な情報を開示する必要がある」と述べているのを思いだしました。2冊の本を読み、ミッションとは「会社がステークホルダーに対して果たすべき役割」と理解しました。その「成果」が利益につながらなければ企業は持続的な発展を続けることができない、それがミッションからスタートするという意味ではないでしょうか。

『断絶の時代』 著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

ダイヤモンド社発行 2007年7月12日 第1刷発行 2019年1月24日第5刷発行 P214

(成果が主人公)
 今日の組織は、集中することによってのみ成果を上げうる。組織とそのマネジメントの力の基盤となりうるものは一つしかない。成果である。成果をあげることが、組織にとって唯一の存在理由である。組織が権限を持ち権力を振るうことを許される理由である。このことは、組織それぞれが自らの目的が何であるかを知らなければならないことを意味する。
 われわれは、組織それぞれの能力を測定し、あるいは少なくとも評価することができなければならない。また、組織が自らの役割に集中すべきことを要求しなければならない。これらを超えるものはすべて越権である。
 多元社会iの組織にとっては、それぞれの目的に集中することが正統性の鍵となる。それぞれの組織にとって、何が自らの目的であるかについては、いろいろな考えがありうるし、あって当然である。しかもそれは、状況、ニーズ、価値観、技術の変化によって変わっていく。同じ国の別の大学、同じ産業の別の企業、同じ医療にかかわる別の病院など、同じ世界に属していても、組織が違えば別のものであっても不思議はない。
 しかし、いずれの組織も自らの目的を規定するほど強くなる。自らの成果を評価する尺度と測定の方法を具体化できるほどより大きな成果をあげる。自らの力の基盤を成果による正統性に絞るほど正当な存在となる。こうして、「彼らの実りによって彼らを知る」ことが、これからの多元社会の基本原理になる。

 上記について先週紹介した『実践するドラッカー利益とは何か』P92では下記のように解説しています。

 利益なくして組織の存在はありえません。利益の源泉は顧客です。したがって、顧客の存在なくして組織の存在はありえません。「事業の目的は顧客の創造である」とドラッカー教授が述べた理由でもあります。

 中小企業庁の事業で、早期経営改善計画策定支援事業(通称:ポストコロナ持続的発展計画事業)がスタートしています。認定経営革新等支援機関として、計画の作成を支援する機会が増えてきました。計画は黒字化のストーリーをつくることから始めましょう。


i 多元社会とはつまり、企業だけでなく、政府機関、労働組合、学校、病院など様々な組織が一つの社会に含まれていることを意味します。これは企業の中でも同じことが言えます。企業の中にはさまざまな部署が存在しています。営業部門だけでなく、経理部、総務部、システム開発部などなど。現代は多元社会です。だから、企業全体、社会全体について知る必要があるのです。
参照 https://note.com/parikan/n/n85deecbf944c

『実践するドラッカー 利益とはなにか』上田 惇生 監修 佐藤 等 編集

発行ダイヤモンド社 2013年3月27日第1刷発行 P89

われわれにとっての成果はなにか
 組織の成果は、一人ひとりの人間の生活、人生、環境、健康、期待、能力の変化という組織の外の世界に表れる。組織がミッションを実現するには、あげるべき成果を明らかにして資源を集中しなければならない
『経営者に贈る5つの質問』……P55
P92 成果は組織とマネジメントの基盤である
 組織とそのマネジメントの力の基盤となりうるものは一つしかない。成果である。成果を上げることが、組織にとって唯一の存在理由である。(中略)このことは、組織それぞれが自らの目的が何であり、成果が何であるかを知らなければならないことを意味する。
『断絶の時代』……P214
P94 成果の定義① ミッションからスタートする
 ミッションからスタートしなければいかなる成果もあげられない。ミッションがあげるべき成果を想定する。
『非営利組織の経営』……P121
P96 成果の定義② 三つの領域で定義する
 あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取組み、人材の育成である。これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。
『経営者の条件』……P81
P98 成果の定義③ 効率より成果が先である
 最高の事業であっても効率が悪ければ潰れる。しかし間違った事業であっては、いかに効率が良くとも生き残ることはできない。馬車用の鞭(むち)のメーカーであったのでは、効率のいかんにかかわらず存続はできない。成果のあがる事業であることが繁栄の前提である。効率はその後の条件である。効率とは仕事の仕方であり、成果とは仕事の適切さである。
『マネジメント(上)』……P52

 私の趣味の一つは映画を見ること、気に入った映画は何度も見ます(笑)。ネットフリックス、「もう一度みる」を時々利用します。繰り返してみることで気づかなかったことを発見できます。
 書きたかったのは映画の話ではなく、ドラッカーの本です。以前も書きましたが私は上田惇生氏iの著書を主に読んでいます。繰り返し読むことで理解度が深まります。今、取り組んでいる事はこの本から始めました。PDCAというサイクルを唯一の経営プロセスと考えることは危険です。常にミッションを確認し、必要とあればミッションを見直し、新たな基礎をえて計画を立てていかなければなりません(P246)。もう一度原点に返って復習します。


i1938年11月9日―2019年1月10日は日本の経営学者。モノづくり大学名誉教授、立命館大学客員教授、ドラッカー学会代表。Wikipedia参照

『仕事はカネじゃない!』ケビン&ジャッキー・フライバーグ 著 小幡 輝夫 訳

日経BP社発行 2004年4月26日 第1刷発行 P124

経営戦略を共有する
 経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない。経営者であれば重大な問題に直面したとき、自信をもって対処することを問われる。そんな場合、経営者の立場を自覚する者は常識を働かせて判断を下す。もちろん全社員が経営戦略を熟知していれば、適切な判断を下しやすくなるだろう。経営戦略を従業員に知らせるのは、まさに適切な判断を下してもらうためなのだ。それを確実にする一つの方法として、何か問題に直面したとき、どういう選択肢を選ぶか質問してみるとよい。会社に独自性を持たせるには何をすべきか、考えてもらうのもいいだろう。当然のことだが選択肢を選ぶ場合、会社の目標や現状、存在意義について理解していれば、適切な判断を下しやすくなる。
 サウスウエスト航空は、この問題についてよい見本を提供してくれる。従業員が指定席を設けるよう提案したときコリーン・パレットは、それは会社の基本戦略に沿ったものかと聞き返した。指定席を設けるのは簡単だが、そうした場合、待機時間が長くなり、定時発着の実績に支障をきたさないだろうか。さらに運賃も10ドルから15ドル値上げすることになり、顧客にとっても望ましくないはずだ。ガッツのあるコリーン・パレットは、会社員に自社の経営戦略を再確認させるチャンスを逃がさなかった。彼女はこの問題について従業員と率直に話し合いサウスウエスト航空の経営戦略を説いたのである。経営者の立場で行動するには、経営戦略を熟知していなければならないからだ。
 パレットは従業員の自主性を奨励すると同時に、従業員が適切な判断をしているかどうか点検する必要があることも心得ている。経営戦略に基づく従業員の自主判断の範囲を想定しているの、サウスウエスト航空の目標やビジョン、価値観なのである。自主判断の範囲が規定されているといっても、それは創造性の制限や無秩序とは全く関係ない。サウスウエスト航空の目標は確かに、ウォルマートと違っている。そして、その違いが重要であることをサウスウエスト航空は自覚いているのだ。 i経営者の立場を自覚する従業員は、次のような質問に答えることができる。わが社はどんな事業に取組んでいるか。我が社は何のために存在いているのか。我が社は他社どう違っているのか。経営戦略を示すことは、従業員の活力抑制はつながらない。それによって、従業員は自主的に行動できるようになるのだ。

 この本は、書棚から探しました。「経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない」…奥の深い言葉です。後継者に人事と組織を渡した私にできることはOJT。「お客様の期待に応える取組み」後方支援に徹し、従業員に「仕事を通じて自主的になってもらうこと」に徹します。


iサウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケレハーの法律事務所で役員秘書を勤め、社長兼CEOになった人。

『経営理念の教科書』新 將命 著

㈱日本実業出版社発行 2020年11月1日 P199 第6章 生きた経営理念の使い方


創った理念は使ってこそ
 理解度とは行動の質と量に表れるものだ
 経営理念の理解度とは全社員の行動に表れる。行動に表れるとは、理念を道具として日常業務に使っているということだ。いささか口が酸っぱくなる気がするが、経営理念は使ってナンボである。
 とはいえ改めて経営理念をつくるとなると、それはそれで大変な知力、体力を必要とする。その結晶である経営理念を眺めていると、そこには努力と苦労のにおいがする。
 額縁に入って、社長室の壁の高いところに掲げられた経営理念をみると、社長の気持ちは変わってくる。
 しかし、壁に掲げただけでは何の役にも立たない、単なる掛け声である。
 一つの理念を創り上げるのは、確かに大きな作業だ。だが、創ることそれ自体はプロセスであり、手段にすぎない。
 たとえば、一つの製品を仕上げるには、必ずそれ相応の苦労がある、時間もかかる。
 開発から完成まで一気呵成に一直線という製品はあり得ない。途中に山もあり、谷もある。試行錯誤を繰り返しながら、ときには数多くの挫折も味わい、完成までこぎつけるものだ。だからこそ、完成したときの喜びがひとしおなのである。

●使われない製品は存在しないのと同じ
 しかし、製品はつくって終わりではない。使ってもらわないことには開発した意味がない。
 ソニーが創業から間もない頃に、日本で初めてのテープレコーダーをつくった。まだ社名を東京通信工業としていた時代である。
 日本のオープンリール型のテープレコーダーは、創業者、井深大氏の悲願だった。それまでトースターや電気釜をつくっていた東通工(東京通信工業)がはじめてつくった音響製品である。
 日本初のテープレコーダーは、日本の産業史の中でも画期的な製品だ。
 だが、井深大氏は、テープレコーダーの完成だけでは喜ばなかった。製品は使われなければ意味がない。
 販路を徹底的に追求した。当時の放送局はまだ数が少ない。一般に売るには価格が高い。そこで井深氏は学校に販路を求めた。
 学校なら視聴覚教育用にテープレコーダーを使う。そして学校の数は放送局よりも圧倒的に多い。

●技術も理念も使われるためにある
 かつて、ソニーの役員を務める人から、「ソニーは技術の会社と言われているが実はマーケティングがソニーの強みだったのです」と聞いたことがある。
 その役員は、井深氏のつくった日本で最初のテープレコーダーに感銘を受け、まだ中小企業だった東通工に入社した人だ。
 ソニーはその後も独自の製品を開発し続けてきたが、次第に技術のみ社内での価値が偏り始めたように見える。
 製品も技術も使われてナンボ、つくっただけでは記録に残るだけで記憶には残らない。70数年を経て井深氏のDNAは薄らいだのだろうか。
 技術には二つある。使われる技術と使われない技術だ。
 使われない技術にも優れたものは多い。現在、航空機の材料にも使われる炭素繊維は、源流を辿るとエジソンの発明した電燈に行き着く。
 炭素繊維は、今日でこそ脚光を浴びているが、20年ほど前には釣り竿、ゴルフクラブにしか使われていなかった。
 技術には用途開発が必要なのである。技術がどんなに優れていても、実際に使われなければ冬眠状態が続いてしまう。
 一方、経営理念も同じことで使われるために創られる。
 有言実行(Say if and live it)がなければ、宝の持ち腐れに等しい。
 本来、使うために創られた経営理念が、できたとたんに「記念品」と化しては、何のために創ったのかわからない。「仏作って魂入れず」である。
 カネや時間や技術と同じことで、経営理念もまた使ってこそはじめて本当の意味をもつのだ。

 著者は、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどエクセレントカンパニー6社の社長として活躍、現在コンサルタントをしています。「経営理念を実践する」大事なことですが、なかなかできていません。経営理念を実践するための行動基準をつくり、朝礼で斉唱していますがわが社は「実践できている」と言えるか疑問でした。昨年、幹部合宿で経営理念に基づく基本方針(商品、お客様、社員、会社、地域社会)を話し合いました。そして決まった今年の方針は「お客様の期待に応え、お客様と共に成長しょう!」です。経営理念を実践するための「わが社ならではのやり方」考えませんか。