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『経営理念の教科書』新 將命 著

㈱日本実業出版社発行 2020年11月1日 P199 第6章 生きた経営理念の使い方


創った理念は使ってこそ
 理解度とは行動の質と量に表れるものだ
 経営理念の理解度とは全社員の行動に表れる。行動に表れるとは、理念を道具として日常業務に使っているということだ。いささか口が酸っぱくなる気がするが、経営理念は使ってナンボである。
 とはいえ改めて経営理念をつくるとなると、それはそれで大変な知力、体力を必要とする。その結晶である経営理念を眺めていると、そこには努力と苦労のにおいがする。
 額縁に入って、社長室の壁の高いところに掲げられた経営理念をみると、社長の気持ちは変わってくる。
 しかし、壁に掲げただけでは何の役にも立たない、単なる掛け声である。
 一つの理念を創り上げるのは、確かに大きな作業だ。だが、創ることそれ自体はプロセスであり、手段にすぎない。
 たとえば、一つの製品を仕上げるには、必ずそれ相応の苦労がある、時間もかかる。
 開発から完成まで一気呵成に一直線という製品はあり得ない。途中に山もあり、谷もある。試行錯誤を繰り返しながら、ときには数多くの挫折も味わい、完成までこぎつけるものだ。だからこそ、完成したときの喜びがひとしおなのである。

●使われない製品は存在しないのと同じ
 しかし、製品はつくって終わりではない。使ってもらわないことには開発した意味がない。
 ソニーが創業から間もない頃に、日本で初めてのテープレコーダーをつくった。まだ社名を東京通信工業としていた時代である。
 日本のオープンリール型のテープレコーダーは、創業者、井深大氏の悲願だった。それまでトースターや電気釜をつくっていた東通工(東京通信工業)がはじめてつくった音響製品である。
 日本初のテープレコーダーは、日本の産業史の中でも画期的な製品だ。
 だが、井深大氏は、テープレコーダーの完成だけでは喜ばなかった。製品は使われなければ意味がない。
 販路を徹底的に追求した。当時の放送局はまだ数が少ない。一般に売るには価格が高い。そこで井深氏は学校に販路を求めた。
 学校なら視聴覚教育用にテープレコーダーを使う。そして学校の数は放送局よりも圧倒的に多い。

●技術も理念も使われるためにある
 かつて、ソニーの役員を務める人から、「ソニーは技術の会社と言われているが実はマーケティングがソニーの強みだったのです」と聞いたことがある。
 その役員は、井深氏のつくった日本で最初のテープレコーダーに感銘を受け、まだ中小企業だった東通工に入社した人だ。
 ソニーはその後も独自の製品を開発し続けてきたが、次第に技術のみ社内での価値が偏り始めたように見える。
 製品も技術も使われてナンボ、つくっただけでは記録に残るだけで記憶には残らない。70数年を経て井深氏のDNAは薄らいだのだろうか。
 技術には二つある。使われる技術と使われない技術だ。
 使われない技術にも優れたものは多い。現在、航空機の材料にも使われる炭素繊維は、源流を辿るとエジソンの発明した電燈に行き着く。
 炭素繊維は、今日でこそ脚光を浴びているが、20年ほど前には釣り竿、ゴルフクラブにしか使われていなかった。
 技術には用途開発が必要なのである。技術がどんなに優れていても、実際に使われなければ冬眠状態が続いてしまう。
 一方、経営理念も同じことで使われるために創られる。
 有言実行(Say if and live it)がなければ、宝の持ち腐れに等しい。
 本来、使うために創られた経営理念が、できたとたんに「記念品」と化しては、何のために創ったのかわからない。「仏作って魂入れず」である。
 カネや時間や技術と同じことで、経営理念もまた使ってこそはじめて本当の意味をもつのだ。

 著者は、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどエクセレントカンパニー6社の社長として活躍、現在コンサルタントをしています。「経営理念を実践する」大事なことですが、なかなかできていません。経営理念を実践するための行動基準をつくり、朝礼で斉唱していますがわが社は「実践できている」と言えるか疑問でした。昨年、幹部合宿で経営理念に基づく基本方針(商品、お客様、社員、会社、地域社会)を話し合いました。そして決まった今年の方針は「お客様の期待に応え、お客様と共に成長しょう!」です。経営理念を実践するための「わが社ならではのやり方」考えませんか。