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「目標管理の教科書」五十嵐 英憲 著

ダイヤモンド社 2012年5月31日第1刷発行

(P80)
■目標づくりで知っておきたいこと
 ここまで、「目標テーマのピックアップ→達成基準や達成手段を考える」というプロセスを職場目標と個々人目標とのキャッチボールという方法で、リーダーとメンバーみんなでワイワイガヤガヤ話しあいながら展開するという話をしてきた。
 その際の着眼点や留意点を色々と述べたが、もう一つ重要な点が残っている。定性目標の具体化に関することである。
■定性目標は具体化を!
 「夢と働きがいのある職場づくり」、「改善活動提案の徹底」、「コンサルティング営業の推進」、「人事評価システムの構築」等、つかみどころのない雲のような目標が設定されることがある。いずれも、目標もどきのスローガンであり、決して目標と呼べるものではない。
 どうして、そのような事態がおきるのか。それは定性目標の特性のためだ。
 売上高や利益率のように、数値表現できる定量目標とは違い、定性目標は数値化できないものである。そのために、どうしても抽象的な表現になりやすい。
 それを防ぐために、ほとんどの企業の目標管理マニュアルには、「目標はできる限り数値化する事」と記してある。しかし、それは極めて誤解を招きやすい表現だ。
 正しくは、定量目標は「必ず数値化すること」であり、定性目標は「進捗管理や評価に耐えうるように“具体化”すること」でなければならない。
 では、定性目標をどのように具体化するのか、以下の3つの方法が有効である。
■固有名詞を使ってイキイキと記述する
 定性目標の具体化の鉄則は、いきなりの数値目標は避けることである。まず、状態記述を試みる。何が、どのような状態になっていれば、目標達成なのかという、当事者の思いをできる限り具体的にイキイキと記述しようとするものだ。
 たとえば、明るい職場にしたいという当事者の思いを、「毎朝、みんなが笑顔で挨拶している」、「呼ばれたら、感じよく“ハイ”と返事をしている」、「お互いに認め合い、励ましあっている」というように、具体的な状態で表現する。
 こうすると、結果の判定も「◎○△×」の4段階くらいで可能になる。その際に、固有名詞を用いれば、記述場面が限定され、その分だけ進捗管理や評価の精度も高くなる。これが状態記述の基本である。
■数値化可能な代用項目を探し出す
 ➀の状態記述だけでは不安が残る。そのような場合には「代用数値化」も試みる。定性目標の本質に近い数値化可能な“代用項目”を探し出し、それを目標の達成基準として使用する、という方法である。この方法を用いれば、ほとんどの定性目標の数値化が可能になるが、注意すべき点が2つある。
 1つは、目標と因果や相関関係が認められる代用項目を用いること、それを無視すると、「特許の質を高める」という目標を「特許〇件以上」で代用するという類の過ちをおかしてしまう。典型的な質と量との混同、もしくはすりかえである。
 2つは、代用数値が目標の本質からずれないように、複数の、かつ、多面的な代用項目を用意すること。
 たとえば、「接客サービスの向上」という代用項目に、「売上の伸び率」を用意する。よく見られるケースであるが、果たしてそれで十分なのだろうか。
 確かに、接客サービスが向上すれば売上が伸長するという経験則が存在し、それに照らせば成立する図式である。しかし、売上の伸び率は、サービスの向上を証明する1つの要素に過ぎずそれをもって、全てを代替使用とするのは乱暴な話である。「再来店客数の増加数」など、いくつかに代用項目の追加が必要だ。そうしなければ、本来の目標の意味合いを薄めたり、ゆがめてしまう。
■代用項目と状態記述とを組合わす
 ところが、実際に多面的な代用項目を探してみると、そう簡単に代用数値が見つからない。では、どうするか。そのときには、前述の状態記述との組み合わせ使用を試みる。
 まず、実現したい状態を、「全販売員が両手を添えて、お客様に商品を渡している」という具合に書きだし、それに「売上の伸び率」や「再来店の増加数」とをセットにして、トータルで定性目標を具体化する。それが、経験的には一番有効な方法である。

 またまた「目標管理の教科書」です。いつも悩んでいる「定性目標」の設定がでてきたので、引用がついつい長くなってしまいました。BSC(バランススコアカード)では、遅行指標と先行指標という区分があります。私は、遅行指標=結果として達成すべき数値→定量目標、先行指標=結果を出すために行動すべき基準→定性目標と理解しています。
 目標設定のとき、数値で表すことが困難な定性的なことの定義と基準は重要です。その行動は結果につながるのか!この本では、定性目標は「進捗管理や評価に耐えうるように“具体化”すること」でなければならない。と定義づけています。