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「無印良品は仕組みが9割」良品計画会長 松井 忠三 著

角川書店発行 2013年8月30日3版発行

(P2)
■なぜ今「仕組み」を公開するのか
 私はいま、無印良品を運営する良品計画の会長を務めています。そんな私が、あえて無印良品に秘密を公開して、仕組みの大切さを説く理由は大きく二つあります。

 一つは、やや大げさな言い方になりますが、日本の経済を元気にするために、一緒に頑張っていきたいという思いがあるからです。
 いまの日本には、経済状況が厳しいなかでも、努力に努力を重ねているビジネス・パーソンがたくさんいます。しかし、そのような「努力」が、正しく「成果」に結びついていないケースが多いように感じています。
 ではどうすればいいのか、
 そのヒントが「かつて不振にあえいだ無印良品」にあると思ったのです。

 おかげさまで無印良品は、国民的ブランドとして成長しました。今では海外でも「MUJI」と呼ばれ、日本初のブランドとして知れ渡っています。
 しかし、かつては業績が悪化し、「無印良品はもう終わりじゃないか」と業界内で囁かれていた時期がありました。私は、そのような“谷底に落ちていた時期”に社長に就任しています。
 そこで最初に取組んだのは、賃金カットでもなく、リストラでもなく、事業の縮小でもなく、仕組みづくりでした。
 簡単に言うと、それは「努力を成果に結びつける仕組み」「経験と勘を蓄積する仕組み」「ムダを徹底的に省く仕組み」。これが、無印良品の復活の原動力になったのです。
 仕組みとは、組織の根幹にあたるものです。これがしっかり築けていないと、いくらリストラをしたところで、不振の根本原因は取り除けず、企業は衰退します。
 何事も「基本」がなければ「応用」がないのと同じように。「会社の仕組み」がなければ、そこから「知恵」も、ひいては「売上げ」も生まれません。
 逆に、
 ・シンプルに仕事ができる仕組みがあれば、ムダな作業がなくなります。
 ・情報を共有する仕組みがあれば、仕事にスピードが生まれます。
 ・経験と勘を蓄積する仕組みがあれば、人材を流動的に活用できます。
 ・残業が許されない仕組みがあれば、自然と生産性が上がります。
 このような無印良品の「仕組み」はあらゆる業務に及んでいます。
 神は細部に宿る……これは、ドイツ出身の建築家、ミース・ファン・デル・ローエが残したと言われる有名な言葉です。
 この言葉の意味についてはさまざまな解釈がありますが、ディテールにこだわることが作品の本質を決める、という意味ではないかと私は考えています。企業の力を決定づけるのも、やはりディテールであり、それが仕組みなのです。

 この本は、発行されたときに買い、内容をもとに「戦略マップ」をつくりました。本の最後P221に書いてあることば、「リーダーは自分が率先して、頑張ってするのがすべてではないはずです。部下が率先して行動するような仕組みづくり、部下の意識を変えていくのがリーダーに課せられた使命です」をみて、どっきり!この本を読み直し、当時作った「戦略マップ」を確認し、わが社の習慣化している業務をみなおすことにしました。