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『経営は「実行」―明日から結果を出すための鉄則』ラリー・ポジディ、ラム・チャラン、チャールズ・バーグ 高橋裕子訳

日本経済新聞社発行 2003年2月2日1販1刷 2007年6月14日5刷

(P17) 第1章誰も気づかないギャップ
 ある日の夜遅く、CEOはオフィスの自室で腰かけていた。憔悴しきっている。みずから指揮した戦略が失敗した理由を説明しようとしていたが、よくできた戦略で、どこが悪いのかまるでわからなかった。
 「まったく忌々しい。一年間あらゆる部門から人材を集めて、チームをつくった。保養地で一度会議を開き、ベンチマーキングをやり、指標も集めた。マッキンゼーの助言も受けた。全員がこの戦略に賛成した。内容も素晴らしかったし、市場も好調だった。
 間違いなく業界一の精鋭が集まっていた。わたしは大胆な目標を与えた。権限を委譲し、必要なことは何でもできる自由を与えた。何をすべきかを全員がわかっていた。インセンティブ制度は明快で、どんな賞罰が与えられるか理解されていた。みな一丸となって取り組んだ。ここまでやれば、失敗するはずがない。
 だが、年の終わりになっても、目標を達成できなかった。みなが結果を出してくれると信じていたが、裏切られたのだ。この九か月の間に、四度も業績予想を下げた。これでウォール街の信認を失った。取締役会の信頼も失ったはずだ。どうしていいのかわからないし、どうなるかもわからない。正直言って解任されるかもしれない」
 事実、この数週間後、このCEOは取締役会によって解任された。
 これは事実だが、誰も気づかないギャップを示す典型的な例だ。企業が現在、直面している最大の問題を如実に示している。企業経営者と話をすると、似たような話をたびたび耳にする。マスコミでは、うまくいくはずなのに行き詰っている企業が連日のように取り上げられている。エトナにAT&T、ブリティッシュ・エアウエィズ、キャンベル・スープ、コンパック、ジレット、ヒューレット・パッカード、コダック、ルーセント・テクノロジーズ、モトローラ、ゼロックス等々。数え上げれば切りがない。
 これらはみな優良企業だ。敏腕CEOに有能な社員がいる。心躍るビジョンを掲げ、最高のコンサルタントを招聘している。だが、目標達成には何度も失敗している。そんな企業はほかにも数多くある。目標を達成でできなかったと発表するたびに、株が投げ売りされ、膨大な時価総額が吹き飛ぶ。幹部や従業員の士気は下がる。やがてCEOは取締役会によって解任される。

 この本には付箋がいっぱいついています。久々に再読しました。「はじめに」P13には、「どんな戦略も、具体的な行動に落とし込まなければ、結果を生まないことを示す。業務プロセスは、戦略を実行するために段階を踏んで業務計画を策定する方法を示すものだ。戦略と計画はいずれも人材プロセスと結びついており、業務計画の実行に必要な能力と組織の能力とが一致しているかどうかが問われる。と書いてあります。
 この本では「実行」を、経営環境を想定し、自社の能力を評価し、戦略をや業務や、戦略を実行する人材と結びつけ、様々な職種の人々が協商できるようにし、報酬を結果と結びつけることであると定義づけています。小規模事業者に「実行」をわかりやすく伝える努力を続けます。