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『人生を変える80対20の法則』リチャード・コッチ 著 仁平 和夫 訳

株式会社阪急コミニュケーションズ発行 1998年6月1日初版 2010年4月6日初版第33刷

(P13)
パレートの発見――必ず不均衡が生じる
 80対20の法則の基本原則が発見されたのは、約100年前の1987年で、それを発見したのがイタリアの経済学者ヴィルフレード・パレートだった。「パレートの法則」「80対20の法則」「最小努力の法則」「不均衡の法則」など、この法則にはさまざまな名前が付けられているが、本書では「80対20の法則」と呼ぶことにする。パレートの発見以来、この法則は、経営者、コンピューター研究者、品質管理担当者など、責任ある地位につく数多くの人たちに陰ながら大きな影響を与えてきた。それでもまだ、この法則が十分にいかされているとは言えない。80対20の法則を知り、それを活用してきた人たちでさえ、この法則が持つパワーのほんの断片しか利用していない。
 それでは、パレートはいったい、どんなことを発見したのか。パレートは十九世紀のイギリスにおける所得と資産の分布を調査した。そして、所得と資産が一部の人たちに集中していることを発見した。これ自体は驚くほどのことではない。パレートはそれに加えて、二つの奇妙な事実に気がついたのだ。
 一つは、人口に占める比率と、所得・資産総額に占める比率との間に、一貫して驚異的な関係があるという事実である。(この場合、人口というのは、所得がある人たち、資産がある人たちという意味である)。わずか20%の人たちに資産総額の80%が集中していた場合、机上の計算では、10%の人たちに資産総額の65%が集中し、5%の人たちに資産総額の50%が集中していることになり、調べてみると、実際にそうなっていた。大事なのは、そのパーセンテージではなく、富の分布の不均衡に法則性があったという事である。
 パレートが発見したもう一つの事実は、時代を問わず、国を問わず、集めたデータを調べたかぎり、この不均衡のパターンが一貫して繰り返し現れるということであった。パレートはこの事実を知って興奮した。イギリスの昔のデータを調べてみても、ほかの国の現在のデータを調べてみても、まさに数学的な正確さで、同じパターンが繰り返し繰り返し認められたのである。
 これは偶然の一致にすぎないのか、それとも、経済や社会にとって、何か重要な意味を含んでいるのか。所得や資産以外にも、同じパターンが認められるのだろうか――。パレートは偉大な先駆者だった。所得と資産に注目した人は、パレート以前には一人もいなかったからだ(現在、この分布を調べるのはごく当たり前のことであり、そのデータをもとに、ビジネスでは経済の研究が大きく進んだ)。
 残念なことに、パレートは自分の発見の重要性と適用範囲の広さに気づいていながら、それをうまく説明できなかった。パレートの関心は、魅力はあるが、とりとめのない社会学理論のほうへ移っていき、エリートの役割が研究のテーマになった。そして、そのエリート支配論は、ムッソリーニのファシズムに利用されることになり、80対20の法則は長い眠りにつくことになる。数少ない経済学者、とくにアメリカの経済学者はその重要性に気がついていたが、分野が全く違う二人の開拓者の手によって、80対20の法則が息を吹き返したのは、第二次世界大戦が終わってからだった。

 紹介したのは本論が始まるまでの部分です(汗。 本のプロローグP4に「時間が足りないとよく言われるが、80対20の法則を適用してみればわかることだが、実際はその反対である。われわれには時間がたっぷりある。ただそれを無駄遣いしているだけなのだ。」と書いてありました。また、P71第4章あなたの戦略はなぜ間違っているかという項目には
 どこで利益を上げているか、
 どの顧客がドル箱になっているか、
 収益性を理解し、それを高める鍵は細分化にある
 「80対20分析」から単純に鉄論を出してはいけない
 未来へのガイドになる80対20の法則
 発想を切り替える
 上記についての説明があります。前回の『BCG戦略コンセプト』に、「儲かるセグメントと儲からないセグメントをきちんと把握し、それぞれの経済性に応じた合理的対応を考え、実行することである」という記載があることを説明しました。コロナで遅れた時間を80対20の法則で取り返す努力をします。