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『これだけPDCA』すばる舎リンゲージ(2)

川原慎也著2012年7月25日発行

「香乱記」下巻 毎日新聞社 宮城谷昌光著ビジネスに必要な視点として、「鷹の目」と「蟻の目」がある。「鷹の目」というのは計絵者的な視点で、物事を見る目であり、「蟻の目」というのは、現場の視点でものを見る目、ということです。だからといって、「鷹の真」が良くて「蟻の目」が悪いということではありません。大切なのは両方の目を持ちながら、いかにしてバランスを取っていくかということです。「経営者目線と現場目線のバランス」(P44)

 
リーダーは現場に出ることが必要!とよく言われます。組織において何が問題なのか?それを発見する意味においても二つの視点が必要です。

『これだけPDCA』すばる舎リンゲージ

川原慎也著2012年7月25日発行

「香乱記」下巻 毎日新聞社 宮城谷昌光著計画でつまずく大きな要因として、リーダー自身が「計画は作らされるもの」「会社にやらされている」と“思い込んで”いることが挙げられます。どこか他人事のまま進めているため、自発的なアクションを起こしません。(P62)

 
「やらされている」という“思い込み”を抱えたままでは、前向きに実行、評価、改善を進めることができません。よって、PDCAが回らない問題の本質は、そもそも計画をリーダー自身の手で作り込めていないことに尽きるのです。PDCAサイクルをまわす事。それが、勝ち組に回るために必要な最大のポイントです。計画段階で勝負は90%決まるとも言われます。根拠のある計画をつくりましょう。

戦略実行ギャップを埋める

2007年度 バランスト・スコアカード・アジア太平洋サミット「戦略実行の革新」

2007年度 バランスト・スコアカード・アジア太平洋サミット「戦略実行の革新」最近の調査によれば、戦略実行が、今日、企業のトップの最大の関心事となっています。実際、戦略実行を正式に導入している企業は、未導入の企業に比べ、大変良好な業績を達成しています。それでは、戦略実行の中核的能力は、どのように開発、維持すれば良いのでしょうか。Kaplan博士は、そのための必要なプロセスやリソースを通して、戦略を実行に結びつける統合モデルをご紹介します。

キャプラン教授が2005年12月に「戦略マップ」という本を書いた後の論文です。バランス・スコアカードは主に「部門の業績改善」として使われてきたのです。それにもかかわらず、私は最初から「戦略実行のツール」と考え学んできました。そこに認識のずれがあったのです。バランス・スコアカードに関する本に、「バランス・スコアカードは部分最適から全体最適を目指す」という表現が使われています。部分とは部門であり、全体とは全社を意味していたのです。

上記は、キャプラン教授が「アジア太平洋サミット」で発表した内容をHBRのレポート表現している文書です。

→戦略実行の中核能力は、どのように開発、維持すればよいのでしょか?
→そのために必要なプロセスやリソースを通じて、戦略を実行に結びつける統合モデルを紹介します。

という部分に注目しました。
サミットに参加したときのメモを見ると、キャプラン教授は、「社長(CEO)が関心を持って推進リーダーになることが必要」と述べ、

・そこで働いている従業員にが、当該部門の戦略マップを説明できるかと質問し
→理解度を確かめる
・そして、「今やっている作業はこの戦略マップのどの戦略目標か?」
→戦略実行がプロセスやリソースとなっているかを確認

太書きの部分は、メモを確認した上で書きました。サミット参加の時は、理解できなかったのですが、改めて読み直してみると統合モデルの考え方を示しています。

これまでBSCに取り組んできて、戦略実行で最も大事な「肝」は合意形成(意見の一致)
自主性(何をすべきか、やるべきことは決まっていて、それを実行に移そうという判断を自分でする態度)
上記の2点です。
私の経験では「統合モデル」にできません。「統合モデル」があったとしても、それを検証した上でPDCAサイクルが回っていなければ戦略実行は実現できないと思います。PDCAサイクルと戦略のストレッチが経営力強化の「鍵」と改めて感じました。

「戦略マップ」ロバート・S・キャプラン/デビット・P・ノートン(4)

(監訳:桜井通晴、伊藤和憲、長谷川恵一)2005年12月14日発行

418RYK5G3CL._SL500_AA300_戦略に関する文献は、非常に多岐にわたる。戦略に関するフレームワークは学者及び実務家ごとにかなり異なり、戦略の定義についてすら同意が得られていない。戦略マップおよびBSCは戦略へどのようなアプローチに関しても作成できるが、われわれのアプローチは戦略論の分野における創始者の1人であり著名なリーダーの1人であるマイケル・ポーターによって示された普遍的なフレームワークに基づいている。

戦略(P67)

私は、ベストな結果(財務の視点)を出すために、どのようなプロセス(顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点)を踏むべきか!その答えをバランス・スコアカードに求めています。
楠木建の著書「ストーリーとしての競争戦略」に“キラーパス”という言葉が出てきます。キラーパスをKotobankuで調べると、「サッカーで、スルーパスの一種で、グラウンダー(地面を転がるボール)の直線的なパス。強く早いボールパスで決定的なシーンを演出し、敵陣を切り裂くことからこういわれる」と説明がありました。

私がバランス・スコアカードに求めるのは、「ベストな結果を出すためにどのようなプロセスを踏むべきか、それを戦略としてどのように展開すればよいか」ということです。
私にとって“戦略テーマ”は、キラーパスであり、そのストーリー(目的と手段→因果関係)を描くのが戦略マップという考えです。アイデア→戦略→ストーリーという流れが「肝」なのですが、キャプランの「戦略マップ」は、戦略の本質はポーターのフレームワークで考えよう、と言っているように思えます。

「戦略マップ」ロバート・S・キャプラン/デビット・P・ノートン(3)

(監訳:桜井通晴、伊藤和憲、長谷川恵一)2005年12月14日発行

418RYK5G3CL._SL500_AA300_図表2-10は低コスト航空会社も「迅速な地上での折り返し」という戦略テーマに関するアクション・プランとビジネスケースを示している。この戦略テーマは、トータル・コスト低減という顧客への価値提案にとっての核心である。この戦略テーマは、顧客の満足度を増加させ、将来の収益増大につながる定刻の出発と到着に寄与しうるであろう。この戦略テーマはまた、競合する航空会社よりも少ない機体と搭乗員で営業することでこの航空会社の原価低減を可能にし、資本コストを上回る利益とROIをえながらも低価格に敏感な顧客をひきつける安い料金を提供するようにした。
~中略~
このように、図表2-10は、迅速な地上での折り返しという戦略テーマが、無形の資産および戦略実施項目の完全な*ケイパビリティをどのように戦略に方向づけているかを示している。

*ケイパビリティとは、企業が全体として持つ組織的な能力。あるいはそのきぎょうが得意とする組織的な能力。例としては、スピード、効率性、高品質等が挙げられる。(kotobank参照)

「尺度、目標値。および実施項目が戦略を行動に変える」(P85)

 

“ある航空会社”とはサウスウエスト航空のことであり、図表2-10とはサウスウエスト航空の戦略を
①戦略マップに描き戦略目標を示し
②上記①の戦略目標にBSCという区分で、尺度と目標値を記載し
③上記②のBSCをアクション・プランという区分で、実施項目と予算を具体的にしている
この図表を見る限り、戦略テーマは全社の方針であり、その施策を表現している「バランスト・スコアカード」は、4つの視点にセグメントした上で、戦略マップ、BSC、アクション・プランと整理されています。つまり、“戦略テーマ”は、戦略マップの上位概念となっていると考えられます。

サウスウエスト航空を「ある航空会社」と表現しているのはなぜか?
戦略テーマが戦略マップの上位概念になったり、下位概念になったりしているのはなぜか?
経営の仕組みを理解したうえで考えると、どっちでもいいことなのですが、BSCで経営を理解しようと取り組んだ私は、「もう少しわかりやすく書いて欲しい」と叫びたくなりました。

経営計画を策定する手法として、
①現状をベースにあるべき姿を考える
②あるべき姿を考え、現状とのGAPを埋める
という二つのアプローチがあります。図表2-10は①の手法でとらえ、サウスウエスト航空の戦略を「バランスト・スコアカード」として表現しているのではないでしょうか?

「キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード」 ロバート・S・キャプラン/デビット・P・ノートン

東洋経済新聞社(監訳:桜井通晴)2001年9月11日発行

418RYK5G3CL._SL500_AA300_第2章 モービルはいかに戦略思考の組織体へと変貌したか P64

バランスト・スコアカードを作成するということは、最良の成果尺度を探すことでも、他社がそのスコアカードで何を測定しているのかを探るためのベンチマーキングをすることでもない、バランスト・スコアカードの作成プロセスは、モービルNAM&rにならって、次のようなステップを踏んでいる。

①競争を分析する
②顧客の好みと顧客セグメントについて知る
③飛躍的な財務業績を生み出すような戦略を策定する
④標的とする顧客セグメントを選択する
⑤標的とした顧客に対して提案する価値を決める
⑥顧客に対して価値提案を行い、財務的な視点からコストと生産性の目標にかなう重要な内部ビジネス・プロセスを認識する。
⑦内部ビジネス・プロセスと顧客価値の提供に秀でるために必要なスキル、コンピタンス、動機付け、データベース、技術を創造する。
 
このプロセスの最後の段階で、戦略を忠実に反映した戦略目標と成果尺度を持つバランスとスコアカードが完成する。

本には①~⑦の番号が記載されていなかったのですが、説明の都合でつけました。
①~⑤までは経営環境の分析とマーケティングの過程を考え、⑥で顧客に対する提案が、財務
的な成果につながるかを検証し、業務プロセスを確定し、⑦で業務プロセスと学習と組織(人材と組織)の視点のつながりを考えるという流れになっています。顧客→財務→業務→人材と組織という視点の順序で考え、記載はありませんが、次のステップで戦略マップを使い、各視点のつながりを“目的と手段”の因果関係でストーリーにする、という重要な流れを示しています。

「戦略マップ」ロバート・S・キャプラン/デビット・P・ノートン(2)

(監訳:桜井通晴、伊藤和憲、長谷川恵一)2005年12月14日発行

418RYK5G3CL._SL500_AA300_「戦略バランスト・スカカード」(原書P78、訳書P111)によれば、戦略テーマとは。「戦略をいくつかの一般的なカテゴリーにセグメン化」したものであるという。以下では、いくつかの発展プロセスをまとめる。キャプランとノートンは、1996年の第1冊目の著書「バランス・スコアカード」で、財務の視点として、4つの戦略テーマを取り上げている。すなわち収益増大、生産性向上と原価低減、資産利用の効率化、リスク低減である。彼らの2001年の第2冊目の著書「戦略バランスト・スコアカード」では、財務の視点だけはなく、4つの視点すべてに戦略テーマを設定するモービルのケースを紹介している。この価値提案は*訳注5に示した3つの価値提案である。さらに2004年の3冊目の著書である本書は、内部プロセスの視点における戦略テーマとして4つの戦略テーマを掘り下げて検討している。実際に、戦略マップを構築するには内部プロセスの視点で戦略テーマを設定し、これらを顧客の視点、さらに財務の視点に関連付けるとともに、内部プロセスの視点を学習と成長の視点にも関連づけなければならない。

*訳注5:トレイシーとウイアーセーマにとれば、価値提案は「卓越した業務」「製品リーダーシップ」「顧客関係重視」からなるという・・・詳細略(P31)

(戦略テーマについて(「戦略マップ」P37脚注)より)

 

上記の解説「戦略テーマ」を読むと。「戦略テーマ」は「戦略マップ」の上位概念ではなく、戦略マップを視点というセグメントにカテゴリー化し、そのセグメントの戦略でテーマにしている。よって、「戦略テーマ」は「戦略マップ」の下位概念と位置づけています。

ロバート・S・キャプランの論文「戦略テーマ」BSCの新ツール

ハーバードビジネスレビュー(2006年7月)

ハーバードビジネスレビューこれまでバランス・スコアカードは、主に部門の業績改善に用いられてきたが、新たに「戦略テーマ」というツールを活用することで、全社的なシナジーを生み出し、企業価値を高める仕組みができあがる。

キャプラン教授が2005年12月に「戦略マップ」という本を書いた後の論文です。バランス・スコアカードは主に「部門の業績改善」として使われてきたのです。それにもかかわらず、私は最初から「戦略実行のツール」と考え学んできました。そこに認識のずれがあったのです。バランス・スコアカードに関する本に、「バランス・スコアカードは部分最適から全体最適を目指す」という表現が使われています。部分とは部門であり、全体とは全社を意味していたのです。

「戦略実行」は部門の業績改善が全社の業績改善にどのようにつながっているのかという検証に始まり、「戦略マップ」という言葉が生まれたのではないでしょうか。この論文に出てきた「戦略テーマ」は、部分最適と全体最適のつながりを表現するための言葉であり、経営計画をつくる段階では「方針」と考えます。私達は、全体最適を前提に経営計画を作成しますが、キャプラン教授は戦略実行の状況を検証し全体最適を考え、「戦略マップ」→「戦略テーマ」という表現を使っているのではないでしょうか。

アメリカでは、株主にたいして四半期ごとの業績をいかに示すことができるか、ということが大事であり、私達が目指しているように、中期の戦略を考え、それを単年度につなげて実行する流れを経営計画として策定する、という概念がないのではないか・・・という気がします。キャプランの本に、経営計画という言葉はでてきません。

ロバート・S・キャプランの論文「ストラテジーマップ」

ハーバードビジネスレビュー(2001年2月)

ハーバードビジネスレビュー競争力の源泉が生産設備や営業拠点といった有形資産から、人材、ノウハウ、技術といった知的資産に移行している。このような「無形資産」(intangible asset)を測定・評価することは、従来の財務諸表では限界があった。そこで登場したのが「バランスト・スコアカード」である。企業活動を、財務面と共に、顧客、業務プロセス・成長、学習の4つの視点から分析する手法である。

上記は、HBRのライブラリーから取り寄せたキャプラン教授の論文の表現です。私は、英語ができないので、原書を読むことができません。和訳したもので解釈することよりできないので、つながりで考えてみました。

バランス・スコアカードを経営指標としての役割から、4つの視点に区分して考え、財務を結果、顧客業務プロセス、学習・成長の各視点をプロセスととらえ、つながりでとらえて分析するという考え方がこの論文で始まり、2005年12月発行の「戦略マップ」にバランスト・スコアカードという表現が使われたのではないかと思います。

「戦略マップ」ロバート・S・キャプラン/デビット・P・ノートン

(監訳:桜井通晴、伊藤和憲、長谷川恵一)2005年12月14日発行

418RYK5G3CL._SL500_AA300_戦略実行の成功には3つの要素が求められる
≪結果のブレークスルー≫=≪戦略の記述≫+≪戦略の測定≫+≪戦略の管理≫
これら3つの考え方は単純である
・測定(第2の要素)できないものは管理(第3の要素)できない
・記述(第1の要素)できないものは測定できない
~中略~
本書では、戦略を記述し可視化するために戦略マップのなかで戦略目標間を結びつけることによって、この戦略の記述について非常に詳細に述べている。したがって、上記の等式を以下のように書き換えることができる。
≪結果のブレークスルー≫=「戦略マップ」+「バランス・スコアカード」+「戦略・バランスト・スコアカード」(P17)

 

私は、バランス・スコアカード(BSC)にのめりこんで、「戦略参謀」という商品を開発しました。(監訳した桜井通晴先生から、平成19年10月30日キャプラン教授が主催した「アジア太平洋サミット」の会場で、本にサインをもらっています。)BSCの普及をテーマにしているのですが、改めて読み直し、上記の中略の「前と後」に「鍵」があると感じました。

書き出しにある“戦略実行の成功”という言葉、ここにBSCの最大のポイントがあると考えます。疑問は、バランス・スコアカードとバランスト・スコアカードはどこがちがうのか・・・