今日の1ページ

『非営利組織の経営』 著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

発行所ダイヤモンド社 2007年1月26日第1刷発行 2017年8月1日第14冊発行 P121

多様な関係者
 非営利組織といえども、成果をあげるにはプランが必要である。プランはミッションからスタートしなければいかなる成果もあげられない。ミッションが、あげるべき成果を想定する。
 したがって、非営利組織は、顧客は誰かを考え、そのそれぞれにとって成果はなんであるかを考えなければならない。
 非営利組織と企業との最大の違いは、非営利組織には多様な関係者がいるところにある。かつて、企業には関係者は1種類、顧客しかいなかった。当時は、従業員、コミュニティ、環境、株主さえ制約要件にすぎなかった。これが大きく変わったことが、今日のアメリカの経営者が世も末と思うようになった一因である。
 ところが、非営利組織にとって関係者はもともとたくさんいる。そのいずれもが拒否権を持っている。学校の校長は、教師、教育委員会、納税者、そして高校の場合には生徒まで満足させなければならない。これら五種類の顧客がみな、学校を違う角度から見ている。彼らのいずれもが、学校にとって欠くことのできない存在である。それぞれがそれぞれの目的をもっている。校長としては、クビにされたり、ストライキされたり、座り込まれたりすることのないよう、彼らのすべてを満足させなければならない。
 1960年頃まで、地域の病院は基本的に医師のために経営されていた。医師が最上位の関係者だった。医師が「入院させなさい」といえば逆らう者はいなかった。いまでは事態は変わった。医療費を負担する雇用主が、医療的にも経済的にも満足させられるべき関係者として登場した。病院の収入の五分の二が老人医療費となったために、連邦政府が病院の利害関係者として登場した。会員制健康保険組合まで利害関係者になった。病院の職員も発言権を増大させた。より多くを要求するようになったというよりも、彼らの多くが専門性を高めたためだった。
 最近協会の多くが信者を増やし、活動を活発化させているのは、青少年、新婚、成人のそれぞれのマーケットが別のニーズを持っていることを認識し、その認識を活動に反映させるようになったからである。
それらの境界は、信者のグループごとに目標を設定し、それぞれに担当者を配置している。

 上記について『実践するドラッカー利益とは何か』(上田惇生監修P94)では下記のように解説しています。

 多くの組織は、ミッションを持っています。それは企業理念や経営理念などとして表現されています。また、経営計画をはじめとした各種プランも多くの場合持っています。しかし、売上や利益とは別に「成果」を定義している企業は億ありません。ドラッカー教授が「成果が主役である」としたにもかかわらずです。
 経営計画を立案してもいわゆる“絵に描いた餅”となってしまうのは、成果を定義していない点に多くの一端があると考えられます。あるいは、成果の形を利益のみで定義しているケースが多いからではないでしょうか。
(中略)
 ミッションと計画を結ぶ重要な役割を果たす「成果」を明確にすることが、ミッションという良き意図を計画として具体化し、実行たらしめる唯一の方法です。マネジメントの主役たる「成果」に対する組織全体の意識を高めて、結果を手にしましょう。

 そもそもミッションには「使命」や「役割」。「任務」などの意味があり、ビジネスシーンにおいては、「会社が成し遂げたい目標」や「会社が果たすべき使命」。「社会における存在意義」のことを指します。という説明がほとんどです。
 会社が誰に対して果たす使命なのでしょうか?知的資産経営で、「企業が持続的な利益を続けていくためには、その企業の取組みを顧客、取引先、従業員、金融機関、株主などのステークホルダーに有益な情報を開示する必要がある」と述べているのを思いだしました。2冊の本を読み、ミッションとは「会社がステークホルダーに対して果たすべき役割」と理解しました。その「成果」が利益につながらなければ企業は持続的な発展を続けることができない、それがミッションからスタートするという意味ではないでしょうか。

『断絶の時代』 著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

ダイヤモンド社発行 2007年7月12日 第1刷発行 2019年1月24日第5刷発行 P214

(成果が主人公)
 今日の組織は、集中することによってのみ成果を上げうる。組織とそのマネジメントの力の基盤となりうるものは一つしかない。成果である。成果をあげることが、組織にとって唯一の存在理由である。組織が権限を持ち権力を振るうことを許される理由である。このことは、組織それぞれが自らの目的が何であるかを知らなければならないことを意味する。
 われわれは、組織それぞれの能力を測定し、あるいは少なくとも評価することができなければならない。また、組織が自らの役割に集中すべきことを要求しなければならない。これらを超えるものはすべて越権である。
 多元社会iの組織にとっては、それぞれの目的に集中することが正統性の鍵となる。それぞれの組織にとって、何が自らの目的であるかについては、いろいろな考えがありうるし、あって当然である。しかもそれは、状況、ニーズ、価値観、技術の変化によって変わっていく。同じ国の別の大学、同じ産業の別の企業、同じ医療にかかわる別の病院など、同じ世界に属していても、組織が違えば別のものであっても不思議はない。
 しかし、いずれの組織も自らの目的を規定するほど強くなる。自らの成果を評価する尺度と測定の方法を具体化できるほどより大きな成果をあげる。自らの力の基盤を成果による正統性に絞るほど正当な存在となる。こうして、「彼らの実りによって彼らを知る」ことが、これからの多元社会の基本原理になる。

 上記について先週紹介した『実践するドラッカー利益とは何か』P92では下記のように解説しています。

 利益なくして組織の存在はありえません。利益の源泉は顧客です。したがって、顧客の存在なくして組織の存在はありえません。「事業の目的は顧客の創造である」とドラッカー教授が述べた理由でもあります。

 中小企業庁の事業で、早期経営改善計画策定支援事業(通称:ポストコロナ持続的発展計画事業)がスタートしています。認定経営革新等支援機関として、計画の作成を支援する機会が増えてきました。計画は黒字化のストーリーをつくることから始めましょう。


i 多元社会とはつまり、企業だけでなく、政府機関、労働組合、学校、病院など様々な組織が一つの社会に含まれていることを意味します。これは企業の中でも同じことが言えます。企業の中にはさまざまな部署が存在しています。営業部門だけでなく、経理部、総務部、システム開発部などなど。現代は多元社会です。だから、企業全体、社会全体について知る必要があるのです。
参照 https://note.com/parikan/n/n85deecbf944c

『仕事はカネじゃない!』ケビン&ジャッキー・フライバーグ 著 小幡 輝夫 訳

日経BP社発行 2004年4月26日 第1刷発行 P124

経営戦略を共有する
 経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない。経営者であれば重大な問題に直面したとき、自信をもって対処することを問われる。そんな場合、経営者の立場を自覚する者は常識を働かせて判断を下す。もちろん全社員が経営戦略を熟知していれば、適切な判断を下しやすくなるだろう。経営戦略を従業員に知らせるのは、まさに適切な判断を下してもらうためなのだ。それを確実にする一つの方法として、何か問題に直面したとき、どういう選択肢を選ぶか質問してみるとよい。会社に独自性を持たせるには何をすべきか、考えてもらうのもいいだろう。当然のことだが選択肢を選ぶ場合、会社の目標や現状、存在意義について理解していれば、適切な判断を下しやすくなる。
 サウスウエスト航空は、この問題についてよい見本を提供してくれる。従業員が指定席を設けるよう提案したときコリーン・パレットは、それは会社の基本戦略に沿ったものかと聞き返した。指定席を設けるのは簡単だが、そうした場合、待機時間が長くなり、定時発着の実績に支障をきたさないだろうか。さらに運賃も10ドルから15ドル値上げすることになり、顧客にとっても望ましくないはずだ。ガッツのあるコリーン・パレットは、会社員に自社の経営戦略を再確認させるチャンスを逃がさなかった。彼女はこの問題について従業員と率直に話し合いサウスウエスト航空の経営戦略を説いたのである。経営者の立場で行動するには、経営戦略を熟知していなければならないからだ。
 パレットは従業員の自主性を奨励すると同時に、従業員が適切な判断をしているかどうか点検する必要があることも心得ている。経営戦略に基づく従業員の自主判断の範囲を想定しているの、サウスウエスト航空の目標やビジョン、価値観なのである。自主判断の範囲が規定されているといっても、それは創造性の制限や無秩序とは全く関係ない。サウスウエスト航空の目標は確かに、ウォルマートと違っている。そして、その違いが重要であることをサウスウエスト航空は自覚いているのだ。 i経営者の立場を自覚する従業員は、次のような質問に答えることができる。わが社はどんな事業に取組んでいるか。我が社は何のために存在いているのか。我が社は他社どう違っているのか。経営戦略を示すことは、従業員の活力抑制はつながらない。それによって、従業員は自主的に行動できるようになるのだ。

 この本は、書棚から探しました。「経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない」…奥の深い言葉です。後継者に人事と組織を渡した私にできることはOJT。「お客様の期待に応える取組み」後方支援に徹し、従業員に「仕事を通じて自主的になってもらうこと」に徹します。


iサウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケレハーの法律事務所で役員秘書を勤め、社長兼CEOになった人。

『経営理念の教科書』新 將命 著

㈱日本実業出版社発行 2020年11月1日 P199 第6章 生きた経営理念の使い方


創った理念は使ってこそ
 理解度とは行動の質と量に表れるものだ
 経営理念の理解度とは全社員の行動に表れる。行動に表れるとは、理念を道具として日常業務に使っているということだ。いささか口が酸っぱくなる気がするが、経営理念は使ってナンボである。
 とはいえ改めて経営理念をつくるとなると、それはそれで大変な知力、体力を必要とする。その結晶である経営理念を眺めていると、そこには努力と苦労のにおいがする。
 額縁に入って、社長室の壁の高いところに掲げられた経営理念をみると、社長の気持ちは変わってくる。
 しかし、壁に掲げただけでは何の役にも立たない、単なる掛け声である。
 一つの理念を創り上げるのは、確かに大きな作業だ。だが、創ることそれ自体はプロセスであり、手段にすぎない。
 たとえば、一つの製品を仕上げるには、必ずそれ相応の苦労がある、時間もかかる。
 開発から完成まで一気呵成に一直線という製品はあり得ない。途中に山もあり、谷もある。試行錯誤を繰り返しながら、ときには数多くの挫折も味わい、完成までこぎつけるものだ。だからこそ、完成したときの喜びがひとしおなのである。

●使われない製品は存在しないのと同じ
 しかし、製品はつくって終わりではない。使ってもらわないことには開発した意味がない。
 ソニーが創業から間もない頃に、日本で初めてのテープレコーダーをつくった。まだ社名を東京通信工業としていた時代である。
 日本のオープンリール型のテープレコーダーは、創業者、井深大氏の悲願だった。それまでトースターや電気釜をつくっていた東通工(東京通信工業)がはじめてつくった音響製品である。
 日本初のテープレコーダーは、日本の産業史の中でも画期的な製品だ。
 だが、井深大氏は、テープレコーダーの完成だけでは喜ばなかった。製品は使われなければ意味がない。
 販路を徹底的に追求した。当時の放送局はまだ数が少ない。一般に売るには価格が高い。そこで井深氏は学校に販路を求めた。
 学校なら視聴覚教育用にテープレコーダーを使う。そして学校の数は放送局よりも圧倒的に多い。

●技術も理念も使われるためにある
 かつて、ソニーの役員を務める人から、「ソニーは技術の会社と言われているが実はマーケティングがソニーの強みだったのです」と聞いたことがある。
 その役員は、井深氏のつくった日本で最初のテープレコーダーに感銘を受け、まだ中小企業だった東通工に入社した人だ。
 ソニーはその後も独自の製品を開発し続けてきたが、次第に技術のみ社内での価値が偏り始めたように見える。
 製品も技術も使われてナンボ、つくっただけでは記録に残るだけで記憶には残らない。70数年を経て井深氏のDNAは薄らいだのだろうか。
 技術には二つある。使われる技術と使われない技術だ。
 使われない技術にも優れたものは多い。現在、航空機の材料にも使われる炭素繊維は、源流を辿るとエジソンの発明した電燈に行き着く。
 炭素繊維は、今日でこそ脚光を浴びているが、20年ほど前には釣り竿、ゴルフクラブにしか使われていなかった。
 技術には用途開発が必要なのである。技術がどんなに優れていても、実際に使われなければ冬眠状態が続いてしまう。
 一方、経営理念も同じことで使われるために創られる。
 有言実行(Say if and live it)がなければ、宝の持ち腐れに等しい。
 本来、使うために創られた経営理念が、できたとたんに「記念品」と化しては、何のために創ったのかわからない。「仏作って魂入れず」である。
 カネや時間や技術と同じことで、経営理念もまた使ってこそはじめて本当の意味をもつのだ。

 著者は、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどエクセレントカンパニー6社の社長として活躍、現在コンサルタントをしています。「経営理念を実践する」大事なことですが、なかなかできていません。経営理念を実践するための行動基準をつくり、朝礼で斉唱していますがわが社は「実践できている」と言えるか疑問でした。昨年、幹部合宿で経営理念に基づく基本方針(商品、お客様、社員、会社、地域社会)を話し合いました。そして決まった今年の方針は「お客様の期待に応え、お客様と共に成長しょう!」です。経営理念を実践するための「わが社ならではのやり方」考えませんか。

『明日を支配するもの』P.F.ドラッカー 著 上田 惇生 訳

ダイヤモンド社発行 1999年3月18日第1刷 2019年3月27日第27刷

経営戦略の前提が変わる P48
 事業の定義を現実の成果に結びつけるものが経営戦略である。経営戦略が望ましい成果を上げないときには、事業の定義を考え直さなければならない。もちろん、経営戦略上予期しなかった成功も、事業の定義を見直すべきことを教える。まったくのとこる、何が機械であるかを決めるものは経営戦略である。経営戦略がなければ、何が成果に結びつき、何が資源の浪費にすぎないかを知る術はない。
 それでは、二十一世紀という急激な変化と不確実性の時代にあって、経営戦略自体が前提とすべきものは何か、組織特に企業が、自らの経営戦略の前提とすべきものは何か、何か確実なものはあるのか。
 これからの時代にあって、確実なものは五つある。いずれも、今日の経営戦略が前提としているものとは異なる。そもそも経済に係わるものではない。社会と政治に係わるものである。
 それは、次の5つである。
 (1)先進国における少子化
 (2)支出配分の変化
 (3)コーポレート・ガバナンスの変化
 (4)グローバル競争の変化
 (5)政治の倫理との乖離

あらゆる情報の基本 P57~58
 企業は、市場シェアには気を使う、売り上げを知ろうとし、その増減を気にする。あらゆる企業が自らの成長の度合いを把握している。ところが、ほとんどの企業が本当に重要な数字を知らない。すなわち顧客の支出のうち、自社が提供するカテゴリーの製品やサービスに使ってもらっている割合についての数字である。この数字の増減を追っている企業は、事実上皆無といってよい。
 支出配分の変化こそ、あらゆる情報の基本である。経営戦略のための基本的な情報である。なぜならば、支出配分は、一度落ち着くならば、長い間そのまま続くからである。一般的にいって、好不況の影響をあまり受けることがあまりない。
 したがって、支出配分の変化ほど、企業にとって重要なものはない。同じように重要なものが、同一カテゴリー内での変化である。
 二十一世紀の初めの数十年間は、この支出配分のカテゴリー間の変化と、カテゴリー内での変化の双方がかなり重要なものになる。ところが、この支出配分の変化に注目している企業やエコノミストはあまりいない。そもそも、彼らはそのような問題があることさえ知らない。

 今、集中して学んでいるのが「財務データと製品市場分析の組み合わせによる経営戦略分析」です。この本を読んで、マーケティングとともに顧客創造に必要なのがイノベーション。Afterコロナの経営戦略、「顧客の支出配分の変化」を知ることがイノベーションに取り組む基本と気づきました。

『“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順』~知的資産経営のすすめ~ 森下 勉 著

発行者 内山 正之 発行所 株式会社西日本出版社 2018年5月12日初版第1刷発行 2019年12月9日第2刷発行 P004


 「知的資産経営の開示ガイドライン」(経済産業省2005年10月)によると、知的資産経営の目的は、
➀企業が将来に向けて持続的に利益を生み、企業価値を向上させるための活動を経営者がステークホルダー(社員、取引先、債権者、地域社会等)にわかりやすいストーリーで伝え、
➁企業とステークホルダーとの間で認識を共有する
となっています。
また、基本原則として、
➀経営者の目から見た経営の全体像をストーリーとして示す。
➁企業の価値に影響を与える将来的な価値創造に重点を当てる。
➂将来の価値創造の前提として、今後の不確実性(リスク・チャンス)を中立的に評価し、対応を説明する。
➃株主だけでなく自らが重要と認識するステークホルダーにも理解しやすいものとする。
➄財務情報を補足し、かつ、矛盾はないものとする。
➅信頼性を高めるため、ストーリーのポイントとなる部分に関し、裏付けとなる重要な指標(KPI)などを示す。また、内部管理の状況についても説明することが望ましい。
➆時系列的な比較可能性を持つものとする。(例えばKPIは過去2年分についても示す)
➇事業活動の実態に合わせ、原則として連結ベースで説明する。
とあります。
 私は、ご縁をいただき、2006年の開示時期から係わり、今までに2,000社以上に知的資産経営のよさを伝え、構築・運営の支援をしてきました。
 知的資産経営はマネジメントシステムの一つです。どのように取り組めば事業価値向上に生かせるか、支援手法の手順の改善や進化に取り組んできました。

 経営の基本要素である「ミッション」。経営理念を実現するために果たすべき社会的役割と理解していましたが、表現の仕方がよくわからなかったのですが、この本で「知的資産経営」を理解し、「ミッション」を表現するプロセスがわかりました。 
ネットに「ミッションとは、組織が成長していく方向性を定めるために必要となるもの。組織で働くメンバーが団結するだけでなく、外部の利害関係者や社会から信頼を得る役割も果たす」と書いてありました。「知的資産経営」に取り組み、流れを整理することで「ミッション」の再確認ができます。新たなテーマができました。

『ドラッカー思考大全』藤屋 伸二 著

発行者 川全正法 株式会社KADOKWA発行 2016年12月15日刷発行 P102


14 戦略は「環境・目的・強み」の3つが重要
 会社全体の方向性を変えるときや、新しいビジネスを立ち上げる時の判断基準は、何でしょうか? あるいは、どのような基本的な条件がそろっていなければいけないのでしょか?
※戦略の前提となる3つの条件
 経営戦略は成り行きではなく、分析にもとづいて決定します。経営戦略を決定する前に、「経営環境」「事業目的」「自社の強み」の3つを確認する必要があります。ドラッカーは「この3つは合致する必要がある」と言っています。
➀経営環境:どのようなチャンスがあるか?
 経営環境とは、ニーズがあり、競争相手がいるところです。チャンスや脅威があるところです。ですから、経営環境の分析をしなければ、会社としてなんの判断もできません。
 会社は、社会に貢献するための仕組みですから、社会が何を求めているかを知ることから、経営戦略の策定をスタートさせなければなりません。
➁事業目的:どれを価値あるチャンスと見るか?
 社会には「さまざまな困った現象」があります。そのなかの「どの困った現象の解消に取り組むのか」を「決める必要があります。それが事業目的です。「人の健康を増進する」でも、「建物の健全な状態を維持・管理する」でも、「中小企業の業務改革にITの面から貢献する」でもよいのです。
 大切なのは、すべてができるように広げすぎず、一方で、ちょっとした変化にも対応できないほど狭めすぎない程度の事業目的を設定することです。たとえば、「総合〇〇企業」では広すぎます。反対に、ガソリンスタンドの事業目的が「給油所」ではエネルギーの変化に対応できないので狭すぎるでしょう。
➂自社の強み:どの分野なら勝つチャンスがあるか?
 「やりたいこと」と「必要とされていること」とは違います。さらに、「必要とされていること」と「自社が上手にできること」も違います。
 市場やお客様があなたの会社に求めているのは、「お客様が必要としていることで、かつ「他社より上手にできること、あなたの会社にしかできないこと」です。逆に考えれば、「どのような商品分野ならば、お客様に必要とされ、かつ競争にも勝てるか」という観点から、対象市場を絞り込んでいきます。

 今日の1ページ久々の更新です。著者の藤屋伸二(ふじやしんじ)氏をネットで検索してみたら「必要なことだけをわかりやすく、おもしろく、実践に役立つ」をモットーに【藤屋式ドラッカー活用法】を伝授するドラッカー活用のスペシャリスト。という紹介がありました。この本は、「ドラッカー」を学び、業績の向上に貢献を目指すビジネスマンに向けて書かれています(「はじめに」参照)。
 昨年後半から、ドラッカーの『創造する経営者』iを読み現状認識(第一に、「今日の事業の成果をあげる」ことに関し、アンバランスが生じていないかを確認すること。第二に、「明日のために新しい事業を開拓する」タイミングを認識すること。重要なのは「将来の見通し」の判断)にこだわった取組みをしてきました。
『創造する経営者』P144に「知識は、本の中にはない。本の中にあるのは情報である」さらに、「知識は、事業の外部すなわち顧客、市場、最終用途に貢献して初めて有効となる」という記載があります。『ドラッカー思考大全』の➀は外部環境分析、➁は事業ドメイン、➂はSWOT分析のことです。


i『創造する経営者』P.Fドラッカー 著 上田 惇生 訳 ダイヤモンド社発行 2007年5月17日第1刷発行 2017年5月12日第12刷発行

『渋沢栄一とドラッカー 未来創造の方法論』國定 克則 著

株式会社KADOKAWA 2020年11月初版発行


(まえがき)P5 6行目~P6 10行目まで
ビジネスの分野で、本質を理解するために学ぶべきとして挙げられる人の中に、必ずでてくるのがピータードラッカー(1909~2005)だ。ドラッカーはいつも物事の全体像とその本質を示してくれる。
 彼は「マネジメントの発明者」として、マネジメントの全体像とその本質を整理した人だ。世の中にはドラッカーは古い人だと思っている人もいるようだが、彼は「知の巨人」と呼ばれ、社会の生態を見続けた人である。ドラッカーは、マネジメントの本質を理解しただけでなく、変化の本質、未来の本質、そしてその本質から導き出される未来創造の本質についても整理してくれている。
 そして、そのドラッカーがビジネスの本質を理解していた人物として高く評価していたのが、渋沢栄一(1840~1931)である。「資本主義の父」とも呼ばれている。
 この二人には共通点が多い。ビジネスに対する考え方も似ているし、変化の時代に大きな成果をあげたという点でも似ている。共に物事の本質を見極めていた人たちなのだ。
 さらに、ドラッカーは渋沢栄一を高く評価していただけでなく、日本という国に惚れていた。なぜなら、ドラッカーが大切にしていた「本質を見極める」という能力に秀でている民族が日本人だったからだ。
 ドラッカーは、日本という国は他の国とは違う独特な特徴を持っていると言う。その日本が伝統的に持っている特徴の説明は本文に譲るが、その特徴が大きな変化の時代に未来を創っていくための重要な武器になるのだ。
 本書は、大きく3つのテーマに分かれている。この3つはそれぞれに関連している。共通することは「全体像とその本質」である。そして、この3つを理解していただくことが、大きな変化の時代に未来を切り開くための手がかりになると思う。
1.渋沢栄一とドラッカーの未来創造
2.ドラッカーに学ぶ未来創造の考え方と方法論
3.日本人の根底に流れる考え方

 この本は、(まえがき)によれば、新型コロナウイルス感染症が発生する前から書き始めたものです。テーマは「未来創造の方法論」、本の帯には、“正解のない時代にビジネスと向き合った偉大な二人から未来を切り開く方法と心構えを学ぶ“とあります。
著者の國貞克則氏は、米国クレアモント大学、ピーター・ドラッカー経営大学院でMBAを取得しています。ドラッカーの『創造する経営者』にある4つの分析で事業を理解するに出てくる「知識分析」の理解できずいましたが、わかりやすい説明があり助かりました。渋沢栄一が紙幣の顔になることの意味も分かり「希望」が湧いてきました。すばらしい本です。

『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の社会をつくり変える』 富山 和彦 著

2020年6月25日 株式会社文芸春秋社発行


(P211)
CXモデルの萌芽―ラグビー日本代表はなぜ結果をだせたのか
 昨年のラグビーワールドカップで日本代表が一次リーグで優勝候補のアイルランドを破り、決勝トーナメントに進むという大活躍を見せ、チームコンセプトOne Teamという言葉が一つの流行語になった。もともとチームワーク指向の日本人の嗜好に合ったこともあるが、このOne Teamは決して同質的で固定的で調和的な集団ではない。人種、国籍、バックグラウンドそして世代も多様で、当然ながら代表の一員になることも、出場することも、チーム内の役割分担という規律を前提にした厳しい競争原理にさらされ、誰も鉄壁の指定席は持っていない。ヘッドコーチとチームメンバー、そしてチームメンバー同士の軋轢、緊張も相当のものらしい。戦うプロ同士なんだから当然だ。浅薄な調和重視でなあなあでやり過ごすと後で厳しいいしっぺ返しが待っている。
 ちなみにこれは連合総研理事長の古賀伸明さん(前連合会長)が故平尾誠二さんから聞かれた話の受け売りだが、ラグビーの有名な格言 one for all ,all for oneについて「一人は皆のために、皆は一人のために」という後半部分は間違いで、この言葉の原義は、最後のoneはチームとしての勝利を意味していたそうである。ラグビーというスポーツが英国のエリート養成、ほぼすなわち軍人要請期間であるパブリックスクールで発信したことから、言葉の甘っちょろさに違和感があったのだが、古賀さんからその話を伝え聞いて大いに納得である。
 あのチームのすごさはこれだけの多様性とメンバーの流動性を持っていながらも、One Teamとして機能したことである。おそらく人種や国籍の多様性においては、日本代表は出場チームの中でも上の方だったのではないか。そして指揮官もニュージランド人である。当然のことがら、いきなりそんな混成メンバーを世界中から集めてチームを作っても機能するわけはがない。ラグビー界は、長年にわたり高校生ぐらいから外国人を受け入れ、大学、社会人に至るまで多くの外国人が活躍してきた。ラグビー界自身の持続的な内なる国際化、多様性というトランスフォーメーションの努力があったからこそ、多様性とOne Teamが機能したのである。まさにCXの成功モデルここにありなのだ。どんなに敏捷性、勤勉性、チームワークを鍛え上げても、日本代表が典型的な日本人種だけで構成されていたらあんな活躍はあり得ない。圧倒的な対格差は克服不可能だったはずだ。
(中略)

 今からでも遅くない、グローバル市場で戦っている企業は、とにかく経営幹部候補の国別、性別、年齢の多様性を実現することに本気で取り組むべし。彼らが日本の労働慣行や給与体系に馴染まないなら、それを変えるべし。日本国内の法制度が邪魔なら、海外で働いてもらうべし。たいていのことはリモートですむことは、今回のコロナショックで実証済みだ。(後略)

 前回掲載した「どんぶり経営病→分ける化→見える化」を進めることが必要でも、これまでのような「財務分析」や「管理会計の活用」だけで課題解決はできない。脱どんぶり経営のstepは、『創造する経営者』(ドラッカー著 P160)に記載があるように、①業績をもたらす領域の分析、利益と資源についての分析、②コストセンターとコスト構造についての分析、③マーケティング分析、④知識分析と進めることが必要です。
 このような取り組みができる人材を中小企業の多くは抱えていません。また、人材育成して取り組むまでの時間はありません。ラグビーチームのような発想で外部(認定支援機関や公的機関)を活用すると、多様性というトランスフォーメーションが可能になります。

『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の社会をつくり変える』 富山 和彦 著

2020年6月25日 株式会社文芸春秋社発行


(P290)
中堅・中小企業の基礎疾患(3)-どんぶり化→分ける化→見える化
 中堅・中小企業は、経済的な組織能力の弱さと、ビジネスモデルの特性上、どんぶり勘定になっている場合が多い。もちろん最低限の帳簿は、主に納税時の申告書類と銀行からの借り入れ時に審査書類とでぃて出す帳簿書類を作るために取っている。しかし、経営上に生かすためのデータとして、経営管理や生産性指標をとるレベルの経営数値把握ができているケースはまれである。
 また、サービス産業は固定費型のビジネスが多く、個々のサービスにかかるコストの多くは把握できず、その配布基準に合わせた業務データをとらないとコストの振り分けができない。最近はIT技術を使えばかなり自動的にエータを取って実作業ベースのコスト(ABC:Activity Based Costing)をとらえられるようになっているが、中堅・中小企業の多くはITリテラシーも低く、結局、どんぶり勘定になってしまうケースが多い。
 一方、製造業はモノにコストを張り付けられるので、なんとなく原価を把握しているような気持ちになりやすい。しかし、多品種生産になってくると、標準原価の基準が雑になりがちな上に、第4章で指摘したように製造業でも共通固定費のマネジメントが実は最終損益を大きく決定づけていて、中小企業に多い下請け的なビジネスモデルではそれが顧客対応で発生しているケースが多い。そうなると営業経費や固定経費を配布して顧客別損益を見ないと、真の姿は見えず経営上の施策は反映できない。一見、製造業に見えてもB2Bの「ものづくり」サービス業という傾向が強いということである。

 とにかく、何が起きているのかを把握できなければ生産性向上のやりようがない。そこでまず手を付けるべきは、「分ける化」「見える化」である。生産性を上げようと思えば、分けて見えるようにしないと思索が出てこないからである。
バス事業であれば、路線側の収支であったり、バスごとの収支であったり、運転手それぞれの生産性だったり…。そのためには指標を設定し、きちんとしたKPIを図れるようにする必要があるわけだが、そうなるとどう測るか、という問題が出てくる。

 この本は第18回RINGS(秋田)未来会計セミナー「コロナ禍における経営のポイント」で主催した武田先生のお話を聞き、購入しました。「コーポレート・トランスフォーメーション(CX)」の意味は…P220に著者が「難しい継続的な改革」と表現していました。見出しは、「中堅・中小企業」となっていますが、私は中小企業を対象に記載していると読みました。
最近、CX、DX(デジタル・トランスフォーメーション)とういう言葉をよく聞きます。これからの経営を考える上で、避けて通れない言葉です。私達、中小企業は、どんぶり化を抜け出す、「分ける化」「見える化」から始めましょう。